2013 Fiscal Year Research-status Report
磁気リコネクションの多階層シミュレーション:メゾスケール構造の効果について
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24740373
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
沼田 龍介 兵庫県立大学, シミュレーション学, 准教授 (30615787)
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Keywords | 磁気リコネクション / ジャイロ運動論 / プラズマ加熱 / マイクロテアリング |
Research Abstract |
2013年度は、昨年度に引き続き国際核融合エネルギー研究センター(IFERC-CSC)の大型計算機Heliosを用いて、電子圧力勾配が存在しない場合の、磁気リコネクションの非線形ジャイロ運動論シミュレーションを行った。特に、プラズマベータの影響について解析を行った。 磁気リコネクションは、磁場に蓄えられたエネルギーが爆発的に解放される現象であるが、解放されたエネルギーが運動エネルギーやプラズマ加熱などにどのように分配されるかはよくわかっていない。磁気リコネクションによるエネルギー変換を考慮する際には、一般に考えられている無衝突プラズマの取り扱いは不適切であり、衝突の効果を無視するわけにはいかない。弱衝突プラズマでは、ランダウ減衰や有限ラーマ半径効果などの運動論的な位相混合効果によって速度分布関数に急峻な構造が形成されるため、プラズマの熱化過程は、位相混合による構造形成と衝突によるその緩和によって決まるからである。 昨年度までの研究から、磁気リコネクションプロセスにおいて、位相混合による粒子加熱が重要な役割を果たすことが、プラズマベータが低い場合に検証されている。2013年度の研究において、シミュレーション結果の詳細な解析を行った結果、磁気リコネクションによって解放された磁場エネルギーのおよそ1/3程度が電子の加熱に用いられていることが明らかになった。また、電子の加熱はランダウ減衰の効果が顕著な磁気セパラトリクス上で起こることが示された。プラズマベータが低い場合には、イオンの運動論効果は小さく流体的に振舞うが、プラズマベータが高い場合には、イオンの運動論効果が大きくなり、イオン加熱も無視することはできなくなる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、圧力勾配がないプラズマとあるプラズマの磁気リコネクションの線形・非線形特性の理解である。(圧力勾配がないプラズマでは、テアリング不安定性、圧力勾配があるプラズマでは、マイクロテアリング不安定性が、それぞれ磁気リコネクションを駆動する。)圧力勾配がない場合のテアリング不安定性の線形特性は、本研究申請時までにすでに調べられている。 2013年度の研究では、特に圧力勾配がない場合のプラズマにおける磁気リコネクションの非線形特性として、磁気リコネクションによる磁気エネルギーから熱エネルギーへの変換機構を詳細に調べた。昨年度までに研究を行ったプラズマベータが低い場合の結果を踏まえて、より運動論効果が顕著になる高ベータプラズマにおける磁気リコネクションのシミュレーションを行った。ここまでの研究において、圧力勾配がない場合の磁気リコネクションの非線形特性の理解については、幅広いプラズマベータに対して概ね達成できている。 一方で、圧力勾配がある場合のマイクロテアリング不安定性の特性については、研究協力者とともに解析を進めている。A. Zocco(IPP-Greifswald, ドイツ)らと共に、理論解析によって、プラズマベータが低い場合のマイクロテアリング不安定性の分散関係を導出した。また、小林(Ecole Polytechnique, CNRS, フランス)らと共に、予備的な非線形シミュレーションを実行することによって、プラズマの圧力勾配が磁気リコネクションを抑制する効果があること、マイクロテアリング不安定性による乱流状の構造が形成されることなどの成果が得られつつある。 以上から、当初の研究遂行計画の順序に若干の変更はあるものの、概ね当初の計画通りに研究が遂行できている。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度までの研究では、特にプラズマに圧力勾配がない場合の、磁気リコネクションの非線形特性について研究を行い、一定の成果を得た。ここまでの成果を踏まえて、2014年度は、圧力勾配がある場合のマイクロテアリング不安定性のシミュレーションを推進する。 2013年度に、理論的に得られたマイクロテアリング不安定性の分散関係をジャイロ運動論シミュレーションによって再現し、詳細な不安定性機構について検討する。特に、マイクロテアリング不安定性において粒子間衝突がどのような影響を及ぼすかを明らかにする必要がある。古くはマイクロテアリング不安定性には、衝突の効果は不可欠であると考えられていたが、Zoccoらの最新の解析では無衝突マイクロテアリングの可能性が示唆されている。第1に、数値シミュレーションによって無衝突マイクロテアリング不安定性を再現する。その後、無衝突の場合の不安定化機構を明らかにする必要がある。さらに、圧力勾配の強さやプラズマベータなどのパラメタ依存性を詳細に解析する。 2013年度までに弱衝突プラズマの磁気リコネクションについて多くの新たな知見が得られている。研究協力者とととも、成果を整理し上記の課題について重点的に議論するために、研究協力者を訪問するための旅費を計上する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初予定していた国際会議での成果発表を、次年度に行うことに変更したため。 2014年6月にドイツベルリンで開催される41st EPS Conference on Plasma Physicsにて研究成果を発表する予定である。国際会議での発表および情報収集のための海外旅費、文献検索、データ整理等のための賃金などに使用する予定である。
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