2013 Fiscal Year Research-status Report
粒子・流体連結に基づく多階層シミュレーションモデルによる磁気リコネクション研究
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24740374
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Research Institution | National Institute for Fusion Science |
Principal Investigator |
宇佐見 俊介 核融合科学研究所, ヘリカル研究部, 助教 (80413996)
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Keywords | 多階層シミュレーション / 磁気リコネクション |
Research Abstract |
磁気リコネクションを階層横断現象として完全に理解することを目指し、多階層シミュレーションモデルの開発を進めた。この多階層モデルでは、扱う計算領域をマクロとミクロの階層に分け、マクロ階層は磁気流体(MHD)手法で、ミクロ階層は粒子(PIC)手法で解き、両者を有限の幅を持ったインターフェイス領域でスムーズに連結する。 平成25年度の成果の1つは、リコネクション下流方向についての階層間連結に取り組んだことである。これまで直接連結していたミクロ階層(PIC領域)とマクロ階層(MHD領域)の間に、平成24年度に整備したクーロン衝突効果をとりこんだPIC領域(衝突PIC領域と名付けた)を設け、3階層連結による多階層モデルを構築した。この新しい多階層モデルの検証として、リコネクションの結果生じるアウトフローを模擬して、マクスウェル分布から大きくずれたプラズマフローがPIC領域から衝突PIC領域を経てMHD領域へスムーズに伝わることを確認した。また、これまで1次元的な階層連結のみを扱ってきたが、今回2次元階層間連結による多階層モデルを開発した。周囲のMHD領域から中央のPIC領域へと2次元的なプラズマフローを伝播させ、上流境界として2次元的に正しく階層間連結がされていることの確認を行った。 一方、開発した多階層モデルを用いて、磁気リコネクションの階層構造を探求を継続している。マクロ階層の振る舞いがミクロ階層におけるリコネクションの物理に大きな影響を与えており、その構造は非常に複雑であることが分かってきたので、さらに詳しく解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の大きな目的は、多階層シミュレーションモデルの開発を進め、そのモデルを用いて磁気リコネクションの階層横断現象を調べることである。開発を目指している最終的な多階層モデルは、下記のような特徴を持つものと想定している。1.上流下流の両方向について2次元あるいは3次元的に階層連結されている。2.粒子領域と磁気流体領域の間にクーロン衝突ありの粒子領域や二流体領域を挟んだ3階層構造モデルを作る。3.必要に応じて時間と共に磁気流体領域を粒子領域に変換する。4.計算領域をMPI並列化する。 モデル開発面については、1を目指して上流における連結条件ではあるが2次元的な階層連結に成功している。また、2についても磁気流体領域-クーロン衝突粒子領域-粒子領域の3階層連結モデルを作成した。さらに、4を目指して領域をMPI並列化した粒子コード、磁気流体コードを整備した。モデル開発面については、少し計画を上回っていると評価できる。 一方、磁気リコネクション研究の方面について評価する。最終的には、多階層モデルを磁場閉じ込め装置や地球磁気圏全体などの大規模な系に適用することである。マクロ階層とミクロ階層が互いにどのような影響を与え合うか、その条件は何か、などの知見を見いだし、磁気リコネクションの階層構造について体系づけられた知見を得ることを目指している。マクロ階層がミクロ階層(粒子領域)に及ぼす影響について詳細に調べており、非常に複雑であることが分かってきた。また、下流におけるアウトフローの振る舞いを調べ、特徴的な速度分布を見出した。研究面の達成度としてはやや遅れているという評価である。 以上から全体として見ると、課題は「やや遅れている」の区分に属するものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年以降も、多階層シミュレーションモデルの開発・拡張を継続する。平成25年までに、磁気リコネクション上流境界条件における2次元階層連結、および下流における1次元階層連結に成功しているので、これらの成果を組み合わせて上流・下流の両方を連結した多階層モデルの開発を行う。 また、開発・拡張した多階層モデルを実際のリコネクション現象に適用し、大規模なシミュレーションを行うことを目指す。第一に考えているターゲットは、地球磁気圏である。地球磁気圏のシミュレーションは、宇宙天気予報分野でも活発に行われており、その方面にも貢献できると考えている。その他、核融合磁場閉じ込め装置へ適用するため、現在のデカルト座標系から円柱座標系やトーラス座標系へ変換し、さらに、使うアルゴリズムも改良することを考えている。例えば、トーラスにおける大部分の領域をHall項や有限ラーマー半径効果などを取り込んだ拡張MHDコードで解き、有理面近傍をPICコードで解くなどの案を検討する。 多階層モデルで広い領域をシミュレーションする際には、使用メモリが膨大になることが問題となる。そこで下記2つの拡張・改良に取り組む。1つは、領域をMPI並列した多階層モデルを開発することである。もう1つは、使用メモリを減らすため、物理状態に応じて格子幅をダイナミックに変化させる適合格子MHDコードとPICコードの連結を進めることである。平成26年には、適合格子MHD領域からPIC領域へのプラズマフロー流入などの検証を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
大きな要因は以下の2つである。3月に開催された日本物理学会第69回年次大会に参加して研究成果を発表したが、その旅費の振り込みが4月になったためである。また、3月に必要となり購入したFortran95/2003についての洋書に対する支払いが4月になったためである。 開発を進めている多階層モデルに、プラズマ分野をはじめとしていろいろな分野における最新のシミュレーション技術を適用することを考えて、様々な文献に当たる。そのため、プラズマ関連・シミュレーション技法関連の書籍購入として消耗品費を使用する。また、シミュレーションデータが膨大になっているので、設備備品費により大規模ハードディスクBuffalo製のHD-QL16TU3の購入を予定している。一方、消耗品費により可視化ソフトウェアを購入する。 これまでの成果を、国内外の学会や研究会で発表して、様々な研究者と議論行う予定である。現在のところ、国内では11月に新潟市で開かれるPlasma Conference 2014、3月に東京で開催される日本物理学会第70回年次大会に、海外では、米国ニューオリンズで行われる日米ワークショップに参加する予定である。以上のため、旅費およびその他として学会参加費を使用する。
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Research Products
(14 results)