2014 Fiscal Year Annual Research Report
時系列情報から再構成する多原子分子ダイナミクスと本質的部分の抽出
| Project/Area Number |
24750002
|
|---|
| Research Institution | Shizuoka University |
|---|
Principal Investigator |
河合 信之輔 静岡大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90624065)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
| Keywords | ダイナミクス / 凝縮相 / 熱的環境 / 運動モード / 次元低減 / 分子動力学 / 一般化ランジュバン方程式 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
複雑な系における特定の物理量の時系列から，少数の本質的なモードを取り出す手法の開発を引き続き推進した。昨年度の報告書で，残された課題として「抽出した２自由度をよりよく表現する座標への変換」と「一般化ランジュバン方程式中のランダム力をも取り込んだ実効自由度概念の構築」を挙げたが，それらについて今年度の研究で解決を得た。
「抽出した２自由度をよりよく表現する座標への変換」については，塩化ナトリウムの水溶液中でのイオン会合について，本研究での解析で得た２自由度のエネルギー地形について解析を進め，運動エネルギーの表式が対角に近くなるように座標を取り直すことで運動をイメージしやすいエネルギー地形を得た。横軸であるイオン間距離に対して実際の反応経路が斜めに傾いている様子が見出され，イオン間距離の変化に対して溶媒の再配置を表すもう一つの自由度が強く相互作用していることが明らかになった。この結果は，第８回分子科学討論会で発表した。
「一般化ランジュバン方程式中のランダム力をも取り込んだ実効自由度概念の構築」については，これまでの実効自由度のとり方を見直し，ランダム力を含む形で定式化し直すことに成功した。解析的なモデル系における考察では，新しい方法で得られた実効自由度のほうが，系が本来もつ力学座標により良く対応していることが分かった。また，二つの状態間の遷移をもつモデル系における数値計算によって検証したところ，最初の座標の選択のしかたにかかわらず，本手法によって状態間遷移に対応する座標をうまく取り出せることが示された。この結果は，日本物理学会第70回年次大会で発表した。
さらに，水溶液中の単一イオンの拡散挙動に関する研究にも着手し，イオン周りの溶媒の運動の様子を明らかにする実効自由度を明らかにした。結果を，第８回分子科学討論会，第4回CSJフェスタ，日本化学会第95春季年会で発表した。
|
