2012 Fiscal Year Research-status Report
電解質・電極エピタキシャル薄膜を用いた電子・イオン伝導の律速因子の解明
Project/Area Number |
24750005
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
熊谷 明哉 東北大学, 原子分子材料科学高等研究機構, 助手 (50568433)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | 物理化学 / エピタキシャル薄膜 / 薄膜電池 / リチウムイオン二次電池 / イオン伝導 / 電気化学 / 固体イオニクス / リチウムイオン電池 |
Research Abstract |
本年度は、電極・電解質エピタキシャル薄膜における電子・イオン伝導の律速因子を突き止めるため、エピタキシャル薄膜作製条件の検討と、エピタキシャル薄膜内への結晶粒界作製技術及びその輸送特性評価の確立を中心として、研究を行った。具体的に述べると、 (1)パルスレーザー堆積法による電極・電解質試料作製時における、薄膜内に取り込まれるリチウム量、成膜時の温度制御を精緻に行った。 (2)単結晶基板上の基板ステップを利用することにより、薄膜内に段差を生じさせ、結晶構造を分断し、結晶粒界を構築させることを可能とした。 (3)輸送特性評価より粒界抵抗の定量化を行った。 これらの技術を利用し、原子レベルで制御したエピタキシャル薄膜を用いて、結晶粒界を意図的に作製し、結晶内の粒界が電池材料の伝導特性に与える寄与を輸送特性評価から検討した。電子に対して伝導体でイオンに対して絶縁体であるイオンブロッキング電極を用いることで、電子伝導に起因する固有粒界抵抗の定量化を行った。その結果、粒界抵抗はバルク内と比較しても極めて高く、結晶粒界が電子・イオン伝導の律速因子になりうることが示唆された。この知見は、今後の電子・イオン伝導を律速する本質的なメカニズムを解明する上で重要である。また、作製条件の緻密な検討の結果、その他のリチウムを含む酸化物も作製した結果、を超伝導体として知られているLiTi2O4において、可視透過率を60%以上保持した透明な超伝導体の作製に成功し、超伝導転移温度(13.3K)の更新を成し遂げた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、始めに本研究の基盤であるパルスレーザー堆積法によるエピタキシャル薄膜作製条件の検討を精緻に行った。リチウム量、成膜温度および雰囲気、薄膜内の原子の酸化数を考慮した結果、X線回折を用いたロッキングカーブ半値幅が0.1を下回る極めて結晶性の高い、急峻な表面を有する薄膜作製を可能とした。本結果は、今後の研究における電池構造または電極・電解質界面の作製において非常に重要な知見である。また、この知見を利用することで、想定していた以上の成果が得られた。リチウム酸化物であるLiTi2O4を作製した結果、今まで透明性と超伝導は相いれないものと思われてきたが、可視透過率を60%以上保持した透明な超伝導体の作製に成功し、超伝導転移温度において世界記録の更新を成し遂げた(Tc=13.3K)。 更に、単結晶基板上の基板ステップを利用することで、薄膜内に粒界を意図的に作製する技術を確立し、その粒界が電子伝導特性に与える影響を検討した。その結果、初めて固有粒界抵抗を定量化(10kohm/cm2)し、粒界抵抗がバルク内と比較し極めて高く、結晶粒界が電子・イオン伝導の律速因子になりうることが示唆された。現在、本年度の研究費で購入した試料表面処理装置と評価雰囲気制御装置(グローブボックス)を用いることでイオン伝導への影響も評価を行うことができれば、本研究の目的である電子・イオン伝導を律速する本質的なメカニズムを解明することに近づいていると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度は、本年度に購入した試料表面処理装置及び評価雰囲気制御装置(グローブボックス)を用いて、試料を大気曝露なく作製し、イオン伝導評価を中心に行う。その際に、エピタキシャル薄膜を用いた電池構造ないし、電極・電解質界面を作製し、リチウムイオン伝導の律速因子の解明に従事する。特に、本年度に得られた電子伝導の律速因子である結晶粒界のイオン伝導への寄与を精査し、指標として定量化を行う。それにより、電子・イオンの両側面からの評価を切り分けてリチウムイオン電池における本質的なメカニズムを解明することを目標とする。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|