2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24750010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
中島 正和 東京大学, 総合文化研究科, 助教 (20361511)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | C2分子 / 異重項間遷移 / d-c遷移 |
Research Abstract |
本研究課題の目的はC2分子の異重項間遷移の観測であるが、本年度は主に異重項間遷移周波数、および遷移強度の見積もりに必要となる基礎データの取得を目的とした実験を行った。具体的には、C2のd-c遷移を室温で観測し、c状態のv=0,2,3,5準位について遠心力項までを含めた正確な分子定数を初めて決定した。また、c状態のv=1準位では摂動が観測された。この摂動解析は現在進行中であるが、c状態のv=1準位はA状態のv=2準位との間に摂動が予測されており、この解析からc状態v=1準位とA状態v=2準位との間のスピン-軌道相互作用のについての知見が得られるはずである。この相互作用の大きさは異重項間遷移強度を決定する直接的な要因となるため、本研究においてきわめて重要なデータが取得できたものと考えている。また、A状態v=6準位との強い摂動が予測されているc状態v=4準位を含むd-c遷移のLIF励起スペクトルは、放電フローセル中で観測することができなかった。理由は不明であるが、今回の実験系ではc状態v=4準位の占有数が非常に少ないことが予想される。 上述の実験には、新たに作成したフロー放電セルの性能評価という意味合いも含まれている。通常広く用いられているACやDC放電ではなく、ナノ秒パルスレーザーと相性のよいパルス放電によるラジカル生成を試みたところ、高感度のスペクトル測定が可能であることが確認できた。 また、超音速ジェット法を用い、室温フロー放電セル中では観測の難しい、比較的高い振電準位の観測にも成功した。異重項間遷移強度の見積もりにあたり、これまで予測値で代替していたいくつかの振電準位の項値を実験的に決定することができたため、遷移強度見積もり精度の向上が期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であれば、本年度中に異重項間遷移の探査に取り掛かっているはずであったが、現時点では未だスペクトル探査にまで至っていない。 これまでに予測していた異重項間遷移周波数や強度から、研究を始める前に最も観測が有望視されていた異重項間遷移はX状態からc状態v=4準位への遷移であった。c状態は準安定状態であるため、このc(v=4)-X異重項間遷移のシグナルは通常のLIF法では観測できない。そのため、d-c遷移を用いた2重共鳴法により異重項間遷移を検出しなければならない。この際、プローブ遷移としてはd-c(v=4)遷移を用いることになるが、これまでに実施したフロー放電セル中での分光実験では、c状態v=4準位を含むd-c遷移が観測されなかった。したがって異重項間遷移シグナル検出のためプローブ遷移の正確な遷移周波数が不明であり、本年度内に異重項間遷移のスペクトル探査までには至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
遷移シグナルのプローブに必要なd-c(v=4)遷移がLIF励起スペクトル中で観測されないため、c(v=4)-X異重項間遷移のスペクトル探査が困難な状況になっている。励起スペクトルではなく、発光スペクトルに対応するSEP法によってd-c(v=4)遷移の正確な周波数を決定し、c-X遷移の観測に挑む予定でいる。また、本年度に観測されたc状態のv=1準位における摂動からは、c(v=1)-X異重項間遷移の強度が大きいことが示唆される。詳細な摂動解析によって、c状態v=1準位とA状態v=2準位の間のスピン-軌道相互作用の大きさを決定し、c状態v=1準位を含む異重項間遷移が観測可能であるかも判断する方針でいる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
異重項間遷移を観測するための2重共鳴実験では、ガス流量安定化のためフロー系の改善が必要となるが、現時点でスペクトル探査にまで至っていないため、本年度はフロー系構築のための支出が少なかった。また、旅費の支出もなかったため、次年度使用研究費が生じている。次年度は、消耗品の他に、ガスフロー系の改善、および研究成果発表のための国内・外国旅費の支出を計画している。
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Research Products
(3 results)