2014 Fiscal Year Annual Research Report
半導体ナノ素子における多励起子生成・消滅ダイナミクスの数値実験的研究
Project/Area Number |
24750016
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
金 賢得 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30378533)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 光励起ダイナミクス / 第一原理分子動力学法 / 量子ドット / 電子移動 / 光電変換効率 |
Outline of Annual Research Achievements |
ナノマテリアル内に光励起された電子・正孔・励起子の非平衡ダイナミクスを電子―フォノン相互作用まで考慮しながら研究を行った。特に、光電変換効率を飛躍的に押し上げうる物理的原理の解明・提言を行った。 高エネルギー励起子(電子―正孔ペア)から複数のキャリアが生まれるMultiple Exciton Generation(MEG)と、その逆過程であるMultiple Exciton Recombination(MER)について、実時間数値実験を行なう第一原理分子動力学法を独自開発し、異なる条件・タイプのナノ素子において本手法に基づく数値実験を実行した。その結果、特異なMEG温度依存性を計算科学的に実証することで、量子ドットのMEG・MERは温度依存しないという従来の常識を覆した。さらに、非自明な温度依存性の物理的要因を、低温において急激なフォノンモードの凍結が生じるためと同定することで、「MEG・MERはクーロン相互作用ではなく電子―フォノン相互作用によって生じている」という物理的原理を提唱した。 半導体量子ドットに蛍光分子が付着したナノ複合体においては、光励起後の量子ドットから蛍光分子への電子移動を実時間で数値実験できる第一原理分子動力学法を、励起子描像に基づいて独自開発した。その結果、マーカス理論における電子移動速度の反転領域がない新種の電子移動が発現することを計算科学的に実証し、その物理的原理を「量子ドット内の強い電子―正孔相互作用によって電子移動時に正孔が追随して励起されるため」と結論付けた。また、電子―フォノン相互作用によって正孔励起が一部阻害され電子移動が鈍くなる一方で、フォノンエネルギー散逸によって正孔のさらなる追随励起が起こり電子移動が促進されるという二つの相反するフォノンの役割がある事を明らかにした。このマーカス反転領域のない電子移動は、ナノ素子からのキャリア取り出し効率を飛躍的に増幅させる新機能として期待される。
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Research Products
(10 results)