2012 Fiscal Year Research-status Report
炭素クラスター・ポリイン負イオンの冷却過程と異性体形成過程の追跡
Project/Area Number |
24750021
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
松本 淳 首都大学東京, 理工学研究科, 助教 (10443029)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 炭素クラスター / 励起分子素過程 / イオン蓄積リング |
Research Abstract |
クラスターは多くの場合高温状態で生成し,その冷却過程がフラーレン類を含めたクラスターの幾何構造を決定すると考えられている。周長約0.8 mの超小型イオン蓄積リング(μE-ring)を用いて,炭素クラスター負イオン(Cn-)とポリイン負イオン(CnH-)の冷却過程を数マイクロ秒から数百ミリ秒にわたって追跡することで,Cn-・CnH-の構造形成機構に関する知見を得ることを目的としている。 平成24年度は,アルゴン1価イオンを用いたμE-ringの蓄積試験を行いながら,Csスパッタイオン源とμE-ringを接続するために,作動排気機能を持った真空槽を設計した。イオン源からリング内へイオンビームを効率良く輸送できるようシミュレーションを行った。その結果,真空槽内にビーム偏向電極と四重極レンズを設置する必要があることがわかり,それに適したイオン光学系を設計した。また,首都大にある静電型イオン蓄積リング(TMU E-ring)を用いて蓄積されたC6-に紫外領域(355nm)のパルスレーザーを照射したところ,約100μ秒の時定数を遅延脱離過程を観測した。シミュレーション結果から電子励起状態を経由した内部エネルギーの急速な緩和が起こっていることが示唆された。TMU E-ringではこのような小さい時定数を持つ過程を詳細に議論することができず,μE-ringを用いた測定の可能性を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画の主な遅れの理由は,アルゴン1価イオンを用いたμE-ringの蓄積試験が遅れていたためである。しかしながらこの蓄積試験を詳細に行うことで,本研究で使用する炭素クラスター負イオンとポリイン負イオンの蓄積条件最適化につながる。μE-ringの蓄積試験と平行して本研究を進めることで遅れを取り戻す予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
まず,今年度設計を行ったイオンビーム入射系を製作する。Csスパッタイオン源で生成された,炭素クラスター負イオン(Cn-)とポリイン負イオン(CnH-)をリングに入射し周回試験を行い,イオンビームの最適入射条件を探す。 イオンの蓄積確認後,10量体程度までのCn-・CnH-の自動電子脱離の寿命測定を行う。ここで得られる結果は,負イオン生成時に電子脱離しきい値よりも高いエネルギーにある準安定励起状態の自動電子脱離の寿命である。この時間依存性から分子の内部エネルギー状態の時間変化を引き出す。これよりイオン源における負イオンの生成温度を見積もる予定である。 次に,C6-に紫外領域(355nm)のレーザー光を照射し約100μ秒の時定数を遅延脱離過程を観測することで,どのような電子励起状態から緩和したのかを詳細に調べる。その後,10量体程度までのCn-・CnH-をターゲットとして,同様にレーザー誘起電子脱離スペクトルの蓄積時間依存性を調べる。観測可能な時間領域で環状構造・鎖状構造といったクラスターの異性体の分岐が起こるならば,それらに特有な励起スペクトルとして現れるはずである。蓄積時間依存性を追跡することで内部状態変化と構造形成の関連を引き出す予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度,イオンビーム入射系の設計が遅れたため製作を開始することができず助成金に残金が発生した。次年度は,この残金を含めてイオンビーム入射系の製作に使用する。主な内訳は,真空槽・イオン光学系部品製作,真空ポンプの購入,イオンビーム制御用電源の購入である。 その後,Cn-・CnH-の負イオンのレーザー誘起電子脱離スペクトル測定を行うために,YAGレーザー用消耗品の購入(主にフラッシュランプ)並びに保守費用・光学部品の購入に使用する予定である。
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Research Products
(4 results)