2012 Fiscal Year Research-status Report
量子モンテカルロ法に基づく振動状態理論の開発と無極性分子への陽電子吸着機構の解明
Project/Area Number |
24750022
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
北 幸海 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 助教 (40453047)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 陽電子 / 量子モンテカルロ法 / 無極性分子 / 振動励起状態 |
Research Abstract |
本研究は、申請者がこれまでに開発してきた高精度第一原理法(多成分量子モンテカルロ法)さらに発展・深化させ、分子の振動励起状態への陽電子吸着に対する高精度理論手法を新たに開発・実装することで、十数年来の謎である無極性分子への陽電子吸着機構を世界に先駆けて明らかにするものである。 本研究計画は以下の4点から構成されている:(1A)量子モンテカルロ法による高精度振動状態理論の開発・実装、(1B)多次元離散データに対する高精度スプライン補完法の構築、(2A) 多次元ポテンシャル曲面と陽電子親和力マップの作成、(2B)無極性分子の振動励起状態における陽電子親和力の系統的解析。申請時の研究計画に基づき、H24年度は(1A)および(1B)の研究課題に取り組み、本研究目的を達成するために必要な全てのプログラム開発を終えている。(1A)では、開発した理論手法の精度検証を目的に、代表的な多原子分子の1つである水分子の基音準位に対する振動解析を行った。本手法による実験値との平均絶対誤差は3cm^{-1}となり、従来法の1つである振動配置間相互作用法による誤差(11cm^{-1})を大きく上回る計算精度を実現できた。(1B)では、Watanabeによって提案された多次元スプライン補完法に基づいたプログラム開発を行い、ポテンシャルエネルギー計算の誤差に関する数値目標(10^{-11} hartree/回)を大きく上回る、誤差10^{-13} hartree/回を達成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究遂行に必要な課題は、(1A)量子モンテカルロ法による高精度振動状態理論の開発・実装、(1B)多次元離散データに対する高精度スプライン補完法の構築、(2A) 多次元ポテンシャル曲面と陽電子親和力マップの作成、(2B)無極性分子の振動励起状態における陽電子親和力の系統的解析、の4点である。申請時の研究計画通り、H24年度は(1A), (1B)を実施し、本研究目的を達成するために必要な全てのプログラム開発を終えている。 協力研究者(指導学生)の就職活動が難航したため、H24年度中に(2A)の課題に取り組むことは出来なかったが、その分、理論手法の開発とその精度検証に注力し、結果として当初の計画を上回る早さで、研究課題(1A), (1B)を終えることができた。 以上のことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の研究計画に基づき、H25年度は研究課題(2A) 多次元ポテンシャル曲面と陽電子親和力マップの作成、および(2B)無極性分子の振動励起状態における陽電子親和力の系統的解析、に取り組む。当初の計画では、初めにアルカン分子の解析を行う予定であったが、陽電子親和力について、より精密な実験値が報告されているCS2の解析を初めに行うよう計画を若干変更する。CS2はアルカン分子と同様に無極性分子であるが、実験的に正の陽電子親和力が報告されており、より小さなCS2分子を解析することで、無極性分子への陽電子吸着機構をより詳細に解析・解明できることが強く期待される。当初予定していたアルカン分子の解析は、CS2分子の解析が終了後、H25年度後半から着手する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(8 results)