2013 Fiscal Year Annual Research Report
量子モンテカルロ法に基づく振動状態理論の開発と無極性分子への陽電子吸着機構の解明
Project/Area Number |
24750022
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
北 幸海 横浜市立大学, 生命ナノシステム科学研究科, 助教 (40453047)
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Keywords | 陽電子 / 無極性分子 / 量子モンテカルロ法 / 振動励起状態 |
Research Abstract |
本研究は、申請者がこれまでに開発してきた高精度第一原理法(多成分量子モンテカルロ法)さらに発展・深化させ、分子の振動励起状態への陽電子吸着に対する高精度理論手法を新たに開発・実装することで、十数年来の謎である無極性分子への陽電子吸着機構を世界に先駆けて明らかにするものである。 本研究計画は以下の4点から構成されている:(1A)量子モンテカルロ法による高精度振動状態理論の開発・実装、(1B)多次元離散データに対する高精度スプライン補完法の構築、(2A) 多次元ポテンシャル曲面と陽電子親和力マップの作成、(2B)無極性分子の振動励起状態における陽電子親和力の系統的解析。前年度までに本研究計画の核となる理論手法開発(1A)および(1B)を終えている。H25年度は開発した新規理論手法を用いて、陽電子吸着が実験的に確認されている無極性分子の1つである二硫化炭素分子(CS2)に対する理論的解析を行った。これによりCS2分子の振動励起状態への陽電子吸着(陽電子の束縛状態)を理論的にも実証することに成功し、その吸着機構は主に逆対称伸縮モードの振動励起による永久双極子モーメントおよび誘起双極子モーメントの増大に起因していることを明らかにした。さらに無極性分子への陽電子吸着機構をより深く解析・考察するために、極性分子への陽電子吸着機構との比較を行った。比較的弱い極性を持つシアン化水素分子(HCN, 3.3 debye)およびホルムアルデヒド分子(CH2O, 2.3 debye)では、振動基底状態においても陽電子吸着が可能であったが、振動励起状態における陽電子束縛エネルギーの増大は、CS2分子の場合と同様、永久双極子モーメントおよび誘起双極子モーメントの増大起因していることを明らかにした。
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Research Products
(16 results)