2013 Fiscal Year Annual Research Report
複数の微視的反応経路を持つ励起酸素原子反応の動力学的研究
Project/Area Number |
24750028
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
小城 吉寛 独立行政法人理化学研究所, 光量子工学研究領域, 上級研究員 (60339108)
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Keywords | 化学反応動力学 / 交差分子線 / 微分散乱断面積 / 一重項酸素原子 / 同位体効果 |
Research Abstract |
励起酸素原子O(1D)とメタンの反応O(1D) + CH4 → OH + CH3は、豊富な反応動力学的テーマを含む多原子反応のモデル系である。申請者らは近年、この反応に微視的反応経路が複数存在し、「障壁のない」基底状態ポテンシャルエネルギー曲面(PES)と、「障壁のある」励起状態PESそれぞれで進行することを実験的に証明した。本課題の目的は、励起状態PESの反応障壁高さ、衝突エネルギー(Ec)に依存した2生成物の並進、振動、回転状態相関、および同位体効果の測定から、反応ダイナミクスの詳細を明らかにすることである。 反応の観察には交差分子線イメージング法を用い、O(1D) + CH4 → OH + CH3 反応の生成物であるメチルラジカルCH3の散乱分布(微分断面積)を測定する。微分断面積には、「挿入反応」と「引き抜き反応」という2つの微視的経路に特有の分布が現れ、これらの反応過程を区別して観測することができる。本課題では特に、分子線速度をキャリアガス選択により変化させ、0.9~7 kcal/molという広いEc範囲での測定を実現した。また、CH4とCD4それぞれで測定を行い、同位体効果を精査した。 結果、Ec低下と共に障壁乗り越え反応である引抜き反応の寄与が明らかに低下していることが分かった。Ecに対する引き抜き成分比の変化から、CH4では0.7 ± 0.3、CD4では0.8 ± 0.1 kcal/molと見積もった。引抜き反応に関する明瞭な同位体効果あるいは量子力学的なトンネル効果は認められなかった。一方、挿入反応については同位体効果が明らかとなった。微分断面積の速度文応・角度分布の比較から、どちらの同位体種でもIVR過程(短寿命中間体における分子内振動エネルギー再分配)は限定的だが、相対的にはCD3ODの方がCH3OHよりもIVRが進行することが明らかとなった。
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Research Products
(4 results)