2013 Fiscal Year Research-status Report
典型元素の性質を利用した機能性オリゴへテロールの開発
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24750031
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
古山 渓行 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30584528)
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Keywords | 有機化学 / 典型元素化学 / 機能性色素 / オリゴヘテロール / フタロシアニン |
Research Abstract |
研究初年度(H24年度)に合成法を確立したAza-BODIPYコア置換体の知見を元に、更なる多重付加体、すなわち環化によるコア置換フタロシアニンの合成に取り組んだ。 現在のところ目的の環化体の合成には至っていないが、その過程でジアミノチオフェンとジイミノイソインドリンが1:2で付加した鎖状化合物の単離・構造決定に成功している。この化合物はこれまでの1:1型付加体とは大きく性質が異なり、可視領域の広い範囲(700~500 nm)の領域に強い吸収帯を有し、結果として化合物自体は深い青色を示す。 またこれらの付加体の末端アミノ基をSchiff塩基で修飾することにより蛍光特性が大きく変化することも明らかにしているが、この原因について計算化学を用いて調査した。分子軌道計算の結果、無修飾体では電子が分子全体に非局在化しているところ、置換基の導入により電子分布に偏りが出ることが分かった。これは置換基から発色団への電荷移動(CT)を示すものであり、これにより蛍光が消光したと考えられる。置換基の軌道エネルギーを変化させればその強度を変えることができるため、今後は系統的な評価により最適な置換基を決定し、実際の物性を評価したい。 以上の研究に平行して、典型元素をフタロシアニン誘導体のコア、すなわち中央に導入した錯体の合成と評価も行った。現在までに、リンを中心に持つある種のアザポルフィリン類が、酸塩基応答によって吸収特性を大幅に変えることを見いだしている。31P NMRによる解析により、この現象はリンの電子状態が大幅に変わることが原因であると分かっており、今後構造化学的解析からより詳細な知見を得たい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
H24年度の課題であった多重付加体の検討を行い、1:2付加体の合成に成功した。当初の予想では、鎖状化合物では物性の大きな変化は見られず、環状になってはじめて発現するとしていたが、実際に合成できた鎖状化合物の物性は非常に興味深く、単分子で太陽光を効率的に利用できる性質を示した。 また、16族元素(硫黄)を含むこれらの化合物で得られた知見を元に、15族元素(リン)を含む化合物の合成検討を行ったところ、アザポルフィリンの中心部にリンを含む一連の新規化合物群の合成に成功し、さらにこれらは興味深い物性を持つことを明らかにすることができた。現在これらの化合物は単離・同定法を確立できた段階であり、リンの効果の解明については次年度の課題と言える。 以上のように当初の予定とは異なる進展があったものの、全てはじめて見いだされた化合物・物性であり、それはこの化合物群の未開拓性によるものであると言える。次年度以降、この特性を元に更なる物性探求を行なうことで、より大きな発展が見込めると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度見いだされた多重付加体および、リンを中心に含むアザポルフィリン錯体について、それらの物性解明を中心に行う。化合物自体の静的な物性のみでなく、環境応答性を明らかにすることで、新規材料としての有用性を示したい。 既に1:1付加体において、末端アミノ基を修飾することによる有用性を示しているが、同様のことが1:2付加体で実現できれば、より長波長の光を用いた化学応答性を発現できると考えられる。また、理論計算による物性予測もできることが分かったので、今年度はこの知見を用いて有用な化合物をデザインし、実際の合成を行いたい。 またリンを中心に含むアザポルフィリン錯体においては、リン上の置換基効果が吸収特性の変化に関与していることが、予備的な検討から分かっている。これを踏まえ、今年度は置換基の異なる一連の化合物の合成・X線結晶構造解析・各種NMRを用いた構造解析を通して、本化合物の性質を明らかとしたい。また、配位子に機能性部位を導入することで、直接機能化できると考えられるため、得られた知見を元に機能性部位の導入に挑む。 以上が次年度以降の基本的方針であるが、未知の部分も多い分子のため、想定外の進展が見られる可能性は十分あると考えている。その際には進捗状況を勘案しつつ、柔軟な研究展開を行ないたいと考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額である。 平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
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Research Products
(23 results)