2013 Fiscal Year Research-status Report
無機ハロゲン化物の酸化を利用した環境低負荷型分子変換法の開発
Project/Area Number |
24750033
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
森山 克彦 千葉大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00509044)
|
Keywords | アルカリ金属塩 / 臭素 / 酸化反応 / ハロゲン化反応 / 極性転換 / 環境低負荷型反応 |
Research Abstract |
本研究では、無機ハロゲン化物の酸化による環境調和型分子変換法の開発を目的とし、主にハロゲン化剤を必要とする反応を検討した。平成24年度の研究において、重金属代用型反応と有機ハロゲン化剤代用型反応として利用できることを見出した。これを基に平成25年度では、無機ハロゲン化物の酸化による分子変換法の応用研究に展開した。重金属代用型反応については、無機ハロゲン化物の触媒的アルコールの酸化反応に成功した。これまでのアルコールの触媒的酸化反応では遷移金属や有機分子を触媒とする酸化反応が報告されている。我々は、従来の方法とは異なった環境調和型反応開発と目的として、地球上に多く存在する天然資源の一つであるアルカリ金属ハロゲン化物を用いたアルコールの触媒的酸化反応を精査した。その結果、アルコールを触媒量の臭化カリウムとオキソンを用いて室温で反応させると、目的のカルボニル化合物を高収率で得た。さらに、酸化剤を過酸化水素水に変えても触媒量のベンゼンスルホン酸を添加することで、反応が進行することがわかった。これまでにアルカリ金属ハロゲン化物の酸化は強酸化剤しか利用できなかったが、穏やかな酸化剤が適用できたことは、非常に有益な結果であると言える。さらに、TEMPO触媒の有無により、1級アルコールからカルボン酸及びアルデヒドへの作り分けが可能であることもわかった。また、有機ハロゲン化剤代用型反応開発として、化学選択的反応を中心に精査したところ、アルカリ金属ハロゲン化物を用いた酸化的極性転換によるアルケニルカルボン酸及びアルケニルアミドのハロラクトン化反応において、それぞれの基質から異なるジアステレオマーが中程度から高い選択性で得られることがわかった。また、不斉分子内ブロモアミノ化反応においても、22% ee の選択性を発現することがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、前年度までの成果により、本研究を順調に進展させることができた。具体的には、これまでのアルカリ金属ハロゲン化物の酸化的分子変換において、強い酸化剤であるオキソンを用いることが必要であったが、ブレンステッド酸を触媒量添加することにより、温和な酸化剤である過酸化水素水を用いることが可能になった。この結果は、無機ハロゲン化物の酸化を利用した環境調和型分子変換法を展開するにあたり、重要な結果であると言える。本結果は、学術論文に投稿中である。また、有機ハロゲン化剤代用型反応については、分子内ブロモアミノ化反応の他に分子内ブロモラクトン化、分子内ブロモエーテル化反応、セミピナコール転位、多成分連結反応など様々な反応に展開することに成功した。特に分子内ブロモラクトン化反応については、ジアステレオ選択的に進行することがわかった。これらの結果は投稿準備中である。さらに、無機ハロゲン化物を用いた不斉反応についても、エナンチオ選択性を発現させることを見出した。しかし、低い選択性であるため、平成26年度はこの不斉触媒反応を重点的に遂行する予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究方策については、交付申請書に従い、平成25年度の研究計画である無機ハロゲン化物の酸化法を用いた高度な分子変換の開発を重点におき遂行する。特に、キラル有機ハロゲン化剤の設計及び触媒的反応の開発を挑戦する。これまで開発したアルカリ金属塩を用いる酸化的分子変換に対する不斉触媒反応を検討し、触媒活性評価を行う。さらに、今年度得られた成果を基に、酸素を酸化剤とする新規分子変換法に挑戦する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は順調に成果が得られたものの、予定より試薬やガラス器具などの消耗品を節約することができた。特に、無機ハロゲン化物の酸化法を利用した高度な分子変換において、化学選択的な反応としてジアステレオ選択的分子変換を見出すことができたが、不斉触媒を利用するエナンチオ選択的反応は現在展開中である。そのため、今年度は、不斉触媒の創製に必要不可欠である高価な光学活性化合物を最小限に節約した。しかし、次年度は不斉触媒を利用するエナンチオ選択的反応を重点に遂行するため、当該助成金を次年度分として利用していく必要がある。 次年度の当該助成金は高価な光学活性化学物を多種多量に購入する予定である。また、研究に必要な実験・設備・分析機器はできる限り既存のものを利用して、研究経費の大部分を消耗品として使用する。本研究の円滑な実験遂行には、多種の消耗品(有機・無機試薬、ガラス器具類、シリカゲル等)が必要である。触媒及び基質合成や化学選択的触媒反応の条件を検討するためのマグネティックスターラー付高温恒温槽の完備が必要不可欠である。
|
Research Products
(21 results)