2012 Fiscal Year Research-status Report
金属ナノクラスター触媒による酸化的アミド合成の開発と新規ナノマテリアルの創成
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24750035
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
宮村 浩之 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 特任助教 (00548943)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 固定化触媒 / 金属ナノクラスター / アミド合成 / ラクタム合成 / イミン合成 / 酸素酸化 / 金触媒 / ポリアミド |
Research Abstract |
前年度までに金ナノクラスターとコバルトを高分子カルセランド法(PI法)にて同一担体に固定化した触媒,PI/CB-Au/Co触媒がアルコールとアミンからの酸素酸化反応による直接的アミド合成において有効に機能することを見出した. 本触媒の構造解析を走査透過型電子顕微鏡を用いて行ったところ,金とコバルトが別々の粒子を形成し,それらが担体中の微小空間に閉じ込められていることがわかった.次に,種々のアミノアルコールを基質として用いる際,希釈条件で反応を行うことで選択的にラクタムを得ることができた.一方,濃縮条件で反応を行うとポリアミドが得られることもわかった. さらに効率的な反応系を構築すべく詳細な反応機構の検討を行った.まず,反応の経時変化を観測したところ,アルデヒドが定常状態中間体として反応系中0.2 M程度に抑えられていることがわかった.アルデヒドを出発原料とする場合は,高いアミド選択性を得るために,アルデヒドの定速添加と金ナノクラスター触媒とコバルト金属粉末を物理混合する系が最も効果的であることがわかった.定速添加を行わないとイミンが主生成物として得られた.種々の対照実験の結果を併せて考えることで,コバルトには二つの役割があると考えられる.一つはアルデヒドの生成速度を抑制すること,もう一つは溶液中に遊離したヘミアミナールを分解しイミン形成を抑制することであると考えられる. 一方,一級アルコールとアミンから酸化的にイミンを選択的に合成する検討を行った.その結果,金とパラジウムからなる合金ナノクラスター触媒を用い,THF-トリフルオロエタノール混合溶媒中で反応を行うことで高い選択性をもってイミンを得ることができた.このように,金属の組み合わせや,ナノクラスターの担体中での配置を制御することで,アルコールとアミンからアミドとイミンを作り分けることができた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画通り,幅広い基質一般性を持ったアルコールとアミンからの酸化的直接アミド合成法を開発することができた.反応機構解析,触媒構造の解析の結果,触媒中のコバルトの役割の解明の手がかりをつかむことができた.走査透過型電子顕微鏡による観測からは,高分子担体中金ナノクラスターとコバルトが別々の粒子を形成することが明らかとなった.これらの結果をふまえてアルデヒドとアミンを出発原料とする効率的な酸化的アミド合成法を開発することができた.特に,二級アミンを基質として用いる場合は,アルコールを原料とするより,アルデヒドを原料とする方が高い収率,より広い基質一般性で目的とするアミドを得ることができた. また,当初の計画通り,アミノアルコールを基質として用いた場合基質の濃度をコントロールすることでラクタムとポリアミドを作り分けることに成功した. 一方,反応条件によってはアルコールとアミンから酸化的にイミンが形成することから,ナノクラスターを形成する金属の組み合わせや反応条件の最適化を行うことで,選択的な酸化的イミン合成反応を達成することができた.これは,金属ナノクラスターを形成する金属の組み合わせやそのナノクラスターの高分子担体中での配置によって生成物の選択性を制御できる興味深い例である.
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Strategy for Future Research Activity |
高分子カルセランド型金―コバルトナノクラスター触媒を用いるアルコールもしくはアルデヒドとアミンからの酸化的アミド合成反応におけるさらなる反応機構の解明を行う.特に,コバルトについては,現在仮説を立てている二つの役割,すなわちアルコールのアルデヒドへの酸化速度の調整,溶液中に遊離したヘミアミナールを分解することによるイミン形成の抑制,これらを裏付けるための検討を行う.また,本アミド合成反応のフローシステムへの適用を行いより効率的な反応系の構築を目指す. ところで,一級アルコールをヒドロキシルアミン存在下,金ナノクラスター触媒を用いて酸素酸化することでオキシムもしくは一級アミドが合成できることを見出している.どちらも有機合成化学上,有用な化合物群であることから,本反応の最適化を行い,それぞれについて選択的に合成できる反応条件を見出す.また,オキシムから一級アミドへの異性化反応が金ナノクラスター触媒によって行われていることが予想され,新たな金ナノクラスターを用いる触媒反応の開発と言う観点からも興味深い. ポリアミド合成については現状では分子量15000程度のポリマーが得られているが反応条件や触媒構造を最適化することでさらに高分子量のポリアミドの合成を目指す.さらに,合成したポリアミドに金ナノクラスターを担持させることによる種々の高機能材料への応用を行う.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(13 results)