2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24750036
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
山口 深雪 静岡県立大学, 薬学部, 助教 (70548932)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機合成化学 / 質量分析 / 反応機構 / 触媒 / 反応中間体 |
Research Abstract |
質量分析法により有機合成反応の触媒種および中間体の検出を可能とするため、モデル反応を用いて反応条件の検討および質量分析の分析条件の検討を行った。 まずいくつかの反応において、安定な中間体を質量分析におけるDirect Analysis in Real Time (DART)イオン化法やエレクトロスプレーイオン化(ESI)法等のソフトなイオン化法で検出できるかを検討し、適した反応条件を探索した。 同時に、それら反応の原料、生成物、そして中間体や触媒種の存在量の経時変化をモニタリングするための連続測定システムを構築するため、オートサンプラーとDART法による検出を組み合わせたシステムを用いて種々の条件検討を行った。その結果、測定データの再現性を得るための検討がより詳細に必要であることが明らかとなった。 続いて、パラジウムおよび水酸基含有ターフェニル型ホスフィン配位子(DHTP)から成る触媒を用いるベンゾフランの合成において、その反応機構を解明するため、反応中間体をESI法で検出することを試みた。中間体や触媒種の検出を可能とするため、種々の条件検討を行った。その結果、塩基存在下、DHTPと基質の複合体を検出することに成功した。これは、本反応においてパラジウム―DHTP触媒が第一段階である薗頭クロスカップリング反応において高いオルト位選択性を示すことの重要な証拠となるものである。また、二種類の配位子を用いるワンポット置換ベンゾフラン反応において、DHTPが特異的に基質と複合体を形成することも明らかとした。本実験結果および反応検討の結果より、薗頭クロスカップリング反応においてパラジウム―DHTP触媒が有効な触媒として機能し、続く鈴木―宮浦クロスカップリング反応ではパラジウム―XPhos触媒が反応を促進することを明らかとした。本結果については現在論文投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ソフトなイオン化法を用いる質量分析法で反応中間体や触媒種を検出するための条件検討では、いくつかの反応については、安定な反応中間体や触媒種を検出可能とする最適反応条件や測定条件を見出すことができた。しかしながら、最適な反応条件や測定条件を見出すことができなかった反応もあったため、それらの反応については今後更なる検討が必要であると考える。 また、反応の進行を定量するため、オートサンプラーとDirect Analysis in Real Time (DART)イオン化法を組み合わせた連続測定システムを構築したが、反応の原料や生成物の存在量の経時変化を定量的にモニタリングするには、特に再現性の面で更なる検討が必要であることが明らかとなった。また、存在量が少ない触媒種や中間体も現時点では容易ではないため、それらを定量するには今後より一層の工夫が必要であると考えられる。 一方、パラジウムおよび水酸基含有ターフェニル型ホスフィン配位子(DHTP)から成る触媒を用いるベンゾフラン合成において、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法をイオン化法に用いる質量分析により反応中間体を検出した。その結果、水酸基含有ターフェニルホスフィン配位子と基質との間の特異的な複合体形成を検出することができた。また、二種類の配位子とパラジウムから成る触媒を用いるワンポット置換ベンゾフラン合成においては、先の質量分析により得られた結果及び合成実験から得られた結果を基に、反応機構の検討を行った。その結果、二種類の触媒がそれぞれ反応特異的に機能することを明らかとした。この結果については現在論文投稿中であり、当初のテーマから派生した研究ではあるが、大きく進展したといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に引き続き、有機合成反応の反応中間体や触媒種をDirect Analysis in Real Time (DART)イオン化法やエレクトロスプレーイオン化(ESI)法等のソフトなイオン化法を用いる質量分析により検出する手法の反応条件および測定条件の最適化を行う。これまでの検討から、最適条件はそれぞれの触媒種や反応により異なることが強く示唆されており、従ってそれぞれの反応について条件検討を行う。 まず、パラジウムおよび水酸基含有ターフェニルホスフィン配位子から成る触媒を用いるベンゾフラン合成について、これまでに検出された触媒種および反応中間体に加え、まだ検出されていない触媒種および反応中間体についても検出可能とするための条件検討を行う。また、それらの触媒種や中間体の存在量の経時変化をモニタリングする手法についても検討していく。これにより、本反応の機構をより詳細に明らかとしていく。また、二種類の配位子を用いるワンポット置換ベンゾフラン合成についても、さらなる検討を行い、詳細な反応機構の解明を目指す。加えて、同触媒を用いる他の反応についても同様に触媒種や反応中間体の検出を試みる。そして、質量分析および他の手法により得られたデータを基に、それらの反応機構を解明していく。 同時に、他の触媒を用いる様々な合成反応についても同様の検討を行い、触媒種や中間体の検出を行う。そして、質量分析および他の手法により得られたデータを基に、それらの反応機構を解明していく。さらに、明らかとなった反応機構を基に、新規触媒の開発および新規有機合成反応の開発検討を行う。 また、核磁気共鳴(NMR)法や赤外吸収スペクトル(IR)法等の他の分析法で得られた結果と比較し、質量分析を用いる本手法の特性や優位性を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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