2013 Fiscal Year Research-status Report
芳香族性と骨格柔軟性を鍵とした動的π共役系の機能発現
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24750038
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
齊藤 尚平 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 助教 (30580071)
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Keywords | 動くπ共役系 / コンフォメーション変化 / 多重発光特性 / 可視化技術 / 構造柔軟性 / 環境応答性 / 応力センサー / メカノクロミズム |
Research Abstract |
π 共役分子は一般に剛直な芳香環や多重結合(おもにsp2 炭素)から構成されるため,必然的に剛直な構造をもつものが圧倒的に多い。このため、π 共役分子は狙った形のものを作りやすく,物性面でも多くの強みをもつ。しかし,基本となる分子骨格が剛直であるということは無機材料に似て,構造の柔軟性に由来する物性の変換は難しく,静的な物性の発現に留まっていると考えることもできる.本研究者は、「π 共役骨格を動かす」という視点に基づき,剛直性の利点を活かしつつ柔軟性を兼ね備えた一連のハイブリッドπ 共役分子をうみだし,1.分子の動きを活かした単成分多重発光材料の開発(J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 8842, Chem. Eur. J., 2014, 20, 2193)と新しい可視化技術の創出(特願2013-257581),2.「すり潰す力」と「圧し縮める力」を見分けられる発光材料の開発(J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 10322)を実現した。特に1の材料は、単成分にもかかわらず、環境に応じて分子が励起状態の形を変えることで光の3原色であるRed、Green、Blueの3色の発光を示す。また、この分子を微量添加物として接着剤(有機溶媒を含むタイプ)に混ぜ込むことで、硬化の過程をリアルタイムで可視化することに成功しており、硬化が不十分な箇所の特定や硬化完了の確認に用いることができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
剛直性と柔軟性を兼ね備えたハイブリッドπ共役系というコンセプトに基づき、当初予想していなかった単成分RGB発光を実現し、さらには、本来目に見えない材料中の物理的な環境変化を肉眼で可視化する技術(マテリアルイメージング技術)を創出するに至った。上記1と2の両成果は、ともに国際一流科学雑誌であるJ. Am. Chem. Soc.誌に掲載された。1は米国化学会 Chemical & Engineering News誌にハイライトされ、続報のフルペーパーはChem. Eur. J.誌のInside Coverにも選出された。応用面でも、接着剤の硬化過程をリアルタイムかつ非接触で可視化する新しい技術が特許の出願につながった。 本成果は、平成25年日本化学会第93春季年会講演ハイライト(プレスリリース)、第2回名古屋大学石田賞、エヌエフ基金研究開発奨励賞、コニカミノルタ画像科学奨励賞、平成26年第8回 PCCP Prize、日本化学会第94春季年会「若い世代の特別講演証」、文部科学大臣表彰「若手科学者賞」の受賞対象となった。また、化学同人出版 月刊「化学」2014年5月号の解説記事に掲載され、表紙を飾った。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、エポキシ樹脂や水の硬化過程を可視化する技術の創出、励起状態の構造変化を利用した光誘起相転移と機能性接着材料への応用、応力歪みに応答して蛍光色が可逆に変化するプリンタブルポリマーの開発と構造ヘルスモニタリングへの応用、微弱な力に応答可能な発光性センサーの開発とメカノバイオロジーへの展開などを試みる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
これまでに新規機能材料のもととなる基本骨格の開発に成功しており、これをより実用的な形にするために分子構造の最適化や高分子化を検討する必要があるため。 主に試薬などの消耗品として活用する予定である。
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