2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24750052
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
小谷 弘明 筑波大学, 数理物質系, 助教 (10610743)
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Keywords | クロム(V)-オキソ錯体 / 基質酸化反応 / 電子移動 / 水素原子移動 |
Research Abstract |
本研究では、電子供与性が異なる二種類のモノアニオン性支持配位子を有する新規クロム(V)オキソ錯体の合成と同定を行った。クロム(V)オキソ錯体は、共にS = 1/2に由来するESRシグナルが観測されたことから、そのスピン状態は同じであることを確認した。また、ESI-TOF-MS測定と共鳴ラマンスペクトル測定において、18Oラベル実験により同位体シフトが観測され、オキソ錯体が生成していることを完全に同定した。 まず、スピン状態が同じクロム(V)オキソ錯体の電子移動特性については、その酸化還元電位(Ered)を適切な電子ドナーとの電子移動平衡反応の解析から、それぞれ1.23 Vと0.73 Vと決定し、支持配位子の電子供与性の違いが強く反映された。種々のフェノール誘導体との電子移動反応をマーカス理論に基づき解析した結果、クロム(V)オキソ錯体の再配列エネルギーλetを0.99 eVと決定した。この値は、これまでに明らかにされてきた高原子価金属オキソ錯体の値(> 2 eV)と比較して、異常に小さい値であることを初めて明らかにした。 最後に、クロム(V)オキソ錯体を酸化剤とした置換基の異なる一連のベンジルアルコール誘導体酸化反応(1.20 V < Eox < 2.88 V)ではいずれも酸化生成物としてベンズアルデヒド誘導体を与えた。その反応速度論解析を行った結果、得られた反応速度定数を、ドライビングフォース(-ΔGet)に対してプロットすると、-ΔGetが-0.2 eV付近で急激に反応機構がHAT経由から段階的なET/PT経由に変化することが分かった。こうした単一のクロム(V)オキソ錯体と一連の基質を用いた単純な反応系において、HAT経由から段階的なET/PT経由への反応機構の切り替わりの観測に初めて成功した。
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Research Products
(2 results)