2012 Fiscal Year Research-status Report
シラノン錯体の構造および反応性の解明と新規合成法の開拓
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24750053
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
村岡 貴子 群馬大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (40400775)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | シラノン / シラノン錯体 / ルイス塩基 / 酸素供与剤 |
Research Abstract |
本研究は、申請者らが世界で初めて単離に成功したシラノン錯体の構造および性質について明らかにすることを目的としている。シラノンはケイ素-酸素間の分極が大きいために反応性が高く、ケイ素上に嵩高い置換基であるMes基(Mes = 2,4,6-Me3C6H2)が導入された錯体しか単離されていない。Mes基の替わりに立体的に小さいMe基を導入したCp’(OC)2W{=SiMe2(DMAP)}(SiMe3) (Cp’ = η5-C5H5 (Cp, 1), η5-C5Me5 (Cp*, 2), DMAP = 4-Me2NC5H5N)と酸素供与剤との反応を検討したところ、錯体1および2ともにシラノン錯体は得られなかった。その代わりに、錯体1からはシリレン配位子およびシリル基の両方がタングステンから脱離した[CpW(CO)3]2が、一方錯体2は4当量の酸素供与剤との反応が進行してCp*(O)2W(OSiMe2OSiMe3)が生成した。これらの結果は、ケイ素上の置換基の立体的な嵩高さがシラノン錯体の安定化に大きく寄与していることを示唆している。また、シラノン錯体の合成における酸素供与剤の効果について検討するため、N2Oを用いてMes基の置換した(シリル)(シリレン)タングステン錯体Cp*(OC)2W(=SiMes2)(SiMe3)およびDMAPとの反応を行ったところ、シラノン錯体は全く得られず、複雑な混合物を与えた。この結果は、他の研究者らが報告している、単離可能なシリレンとN2Oとの反応で単離可能なシラノンが得られる例と対照的である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の研究計画では、1. シラノン錯体の合成における酸素供与剤の検討、2. シラノンケイ素上の置換基効果の解明、3. シラノン錯体の合成法の開拓を行う予定であった。研究計画1では、酸素供与剤として数種類の試薬を用いて反応性を検討しており、本年度も継続して検討していく。計画2では、Mes基よりも立体的に小さいMe基を導入した錯体の反応性を検討した。今後は、Mes基よりも嵩高い置換基を導入してルイス塩基の配位していないシラノン錯体の合成を目指す。なお研究計画3は、現在検討中であり今後さらに継続して実験を行う必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に実施した研究で得られた知見に基づいて、平成24年度の研究計画を継続しながら、さらに平成25年度ではシラノン錯体の反応性について検討していく。シラノン錯体の反応性等の研究成果が出るよう、研究に携わる大学院生をさらに増員して対応していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
昨年度は、当大学大学院工学研究科に共通機器として300, 400および600 MHz NMR、GCMSおよびMALDI-TOF-MASS装置などが導入され、得られた新規化合物の同定等に不自由は生じなかった。一方、原料合成等の時間節約のため、市販されている試薬は極力購入し、研究効率を上げるための高額ガラス器具等へ研究費を充てることが多かったため、本年度も同様の予算割振が必要であると予想された。そこで、昨年度は50万円以上の高額備品の購入を控えて、昨年度の研究費の一部を本年度に繰り越した。本年度は、支給される研究費と昨年度の残研究費を用いて、高効率に研究を遂行するための試薬等を積極的に購入し、さらに研究成果を出すことを目標とする。
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Research Products
(12 results)