2012 Fiscal Year Research-status Report
高機能吸着・誘電複合材料の創製に向けた強誘電多孔性配位高分子の開発
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24750057
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
高坂 亘 金沢大学, 物質化学系, 助教 (70620201)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 多孔性金属錯体 / 誘電特性 / 電場応答性 / 双極子ローター |
Research Abstract |
ジャングルジム型多孔性錯体,[Cu2(L)2(dabco)]n (L = dicarboxylate, dabco = 4-diazabicyclo[2,2,2]octane) のLを様々に変えたサンプル合成した.配位子Lにdmbdc (= 2,3-dimethoxy-1,4-benzenedicarboxylate)を用いた化合物は400 Kにおいて正方晶系のジャングルジム様構造を有しており,配位子中のメトキシ基が4サイトにディスオーダーしていた.300 Kから冷却して行くと,280 K付近から回折パターンに超格子ピークが観測され,解析の結果これらはメトキシ基のオーダリングに伴うピークであることがわかった.誘電率測定の結果,室温以下の温度領域において誘電率に周波数に依存しない大きな値の変化が観測された.これはメトキシ基のオーダー・ディスオーダーを伴う構造転移に起因するものと現在考えている.一方,配位子LにR-bdc (R = 2-methoxy-,2-nitro-,2-chloro-,2,3-difuluoro-,2-bromo-, 2,3,5-trifluoro-)を用いた化合物では,誘電率虚部に周波数分散が観測され,配位子が回転運動する際に乗り越えるエネルギー障壁の大きさが10-30 kJ mol-1程度であることが明らかとなった.これらの化合物にCO2を吸着させて誘電率の測定を行った所,LにR-bdcを用いたものではエネルギー障壁の大きさの増大が見られたが,Lにdmbdcを用いたものではCO2の導入圧に応じて誘電率の値が大きく変化することが分かった.以上のように,ガス吸着と配位子の運動性をリンクさせた誘電材料を得るためには,構造相転移を伴わせることが重要であることが分かった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究目的の一つである“吸着と誘電の複合物性領域の開拓”については,架橋配位子の側鎖(分子ローターの種類)を様々に降ることによって,それぞれ異なる誘電挙動を示す化合物を得ることに成功した.またこれらの物質がゲスト吸着に対してそれぞれ異なる誘電応答を示すことも分かってきており,ゲスト吸着が分子ローターの運動に与える影響について系統的な知見が得られて来ている.一方で,もう一つの目的である“強誘電性を示す多孔性配位高分子の開発と構造・物性の評価”については,強誘電性の発現を示唆する化合物の合成に成功しており,今後,再現性の確認など詳細な物性の検討を行っていく.
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Strategy for Future Research Activity |
“強誘電性を示す多孔性配位高分子の開発と構造・物性の評価”については,強誘電性の発現を示唆する化合物の合成に成功しており,今後,再現性の確認など詳細な物性の検討を行っていく.物質のバリエーションがまだ少なく,系統的な研究に発展させていくには,様々なピラー配位子での単結晶合成を行っていく必要がある.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
配位子合成のためのガラス器具,溶媒,試薬の購入に使用する.また,研究成果を学会等で発表する際の旅費として使用する.
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