2013 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解XAFSを用いたRu錯体の光励起状態の解明
Project/Area Number |
24750062
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
佐藤 篤志 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 物質構造科学研究所, 研究員 (70553981)
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Keywords | 金属錯体科学 / 放射光科学 / 時間分解X線測定 / XAFS |
Research Abstract |
本研究では、放射光のパルス特性を生かした時間分解X-ray absorption fine structure (XAFS)法を用いて、サブナノ秒の時間分解能で、直接的に10pmオーダーで励起状態のRu錯体の構造、電子状態を明らかにすることを目的とした。時間分解XAFSでは、通常の放射光施設での測定に比べて、観測する信号が1/10000になるため、X線の位置の安定化、励起光とX線位置の最適化、レーザーや検出器の外部同期の調整を行い、安定で長時間測定できるシステムの構築を行った。また、ポリキャピラリーレンズを用いてX線を集光する事により、X線のスポットサイズを直径30 umとした。これにより、試料を励起するために必要なレーザー光強度の大幅な削減を行うことができるようになった。このため、レーザー光照射による試料の不可逆変化を大幅に軽減する事が可能となった。また、ガラスキャピラリーと小型循環ポンプを用いた試料周辺環境を開発する事により、Ar雰囲気下で微量な容量でも試料を循環する事が可能となった。以上の改善により、試料は少量でも安定して測定を遂行する事ができるようになった。この測定システムは、様々な金属錯体の測定に適応することが可能である。Ruthenium(II)-tris-2,2'-bipyridine([RuII(bpy)3]2+)水溶液では、光励起直後50psにおいて、Ruと第一近接原子であるNとの結合距離が-0.04Å減少していることも明らかとなった。この構造解析では、デバイ・ワラー因子の増加も起こっており、これは配位子である3つのビピリジン間を電子がホッピングしている事が原因であると考えられる。
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Research Products
(1 results)