2012 Fiscal Year Research-status Report
4族遷移金属ヒドリド錯体を用いた窒素分子の活性化と触媒反応への展開
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24750063
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
島 隆則 独立行政法人理化学研究所, 侯有機金属化学研究室, 専任研究員 (60391976)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 窒素活性化 / チタン / ジルコニウム / ハフニウム / ポリヒドリド錯体 |
Research Abstract |
本研究では、構造明確な均一系4族遷移金属多核ヒドリド錯体を用いて窒素分子を温和な条件下で触媒的に還元し、有用化学物質に変換することを目的とする。平成24年度は4族遷移金属ヒドリド錯体の合成と構造解析に取り組んだ。 シクロペンタジエニル配位子にトリメチルシリル基を導入したハーフサンドイッチ型4族遷移金属トリアルキル前駆体[(C5Me4SiMe3)M(CH2SiMe3)3]を新たに合成し、それらを水素化することにより多核ポリヒドリド錯体の合成に成功した。中心金属がジルコニウム、ハフニウムのアルキル錯体の水素化ではもっぱら四核オクタヒドリド錯体[{(C5Me4SiMe3)MH2}4]が得られた。これらの構造では中心部位に四重架橋ヒドリド配位子を持たない四核構造をとっている。一方、チタンアルキル錯体の水素化では主生成物として三核のヘプタヒドリド錯体[{(C5Me4SiMe3)Ti}3H7]を得た。また、チタンアルキル錯体の場合のみ、窒素存在下で水素化することで窒素-窒素結合の切断、窒素-水素結合の形成が達成されることを見出した。現在反応プロセスの解明を行っている。また、トリメチルシリル基を置換基として持たないチタンアルキル錯体[(C5Me4R)Ti(CH2SiMe3)3] (R = H, Me, Et) の水素化では四核オクタヒドリド錯体が主生成物として得られた。これは水素化反応により得られる多核ヒドリド錯体の構造が、中心金属のみならず支持配位子の電子的・立体的効果にも大きく影響されることを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では4族金属ポリヒドリド錯体の合成と構造解析を中心に行う予定であったが、結果として合成・構造解析のみならず、窒素分子との反応、そのメカニズム解明まで現段階で進んでおり、計画以上に大きく進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は窒素分子との反応プロセスの解明を進めるとともに、活性化された窒素原子をいかにして錯体中から取り出していくのか、金属―窒素結合切断の有効手段の開発を行っていく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の研究においては、安価な窒素ガスおよび安価な遷移金属(チタン)を中心に用いていたため、未使用研究費が増加した。 次年度以降に関しては、反応解析中心に行う予定である。その反応プロセス解明には15N同位体でラベルした窒素分子の使用が必要不可欠である(1リットル数十万円相当)。また、NMRでの解析が主な手法になるので、各種重溶媒の購入、金属種の影響を調べるために、チタン、ジルコニウム、ハフニウムといった貴金属の購入も予定している(1グラム当たり数万円相当)。また金属―窒素結合の反応性を調べるために様々な有機基質との反応を調べる予定で、これらの購入費用に研究費を使用する予定である。
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