2013 Fiscal Year Research-status Report
コンプトン散乱測定を利用したLi元素の非破壊定量分析法の開発
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24750065
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
鈴木 宏輔 群馬大学, 理工学研究科, 助教 (90580506)
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Keywords | コンプトン散乱法 / コンプトンプロファイル / リチウムイオン電池 / 正極材料 / 定量分析法 / 電極反応 / 酸化還元軌道 |
Research Abstract |
本研究は、1. コンプトンプロファイルを用いたリチウムイオン電池の電極材料内におけるLi濃度非破壊定量法の確立と、2. コンプトン散乱法によるLiイオン濃度の変化に伴う電子構造の解明を目的としている。本年度は、LixMn2O4 (x=0.5, 1.1, 1.2, 1.8, 1.9, 2.0, 2.1, 3.3)にコンプトン散乱法を適用し、実験より得られたデータを解析することにより、以下のような成果を得た。 1に関して、コンプトン散乱されたX線のエネルギースペクトル、および、エネルギースペクトルから得られるコンプトンプロファイルが、試料内のLi濃度に応じてその形状を変えることが分かった。そこで、コンプトンプロファイルの形状の違いを数値化するため、新たにSパラメータを導入した。このSパラメータは、Li濃度に敏感なパラメータである。解析の結果、実験より得られたSパラメータが、高周波誘導結合プラズマ(ICP)発光分析法から得られたLi濃度と線形関係にあること、さらに、第一原理バンド計算、および、原子モデル計算から得られた理論的なSパラメータとも非常によく一致することが分かり、本研究において、LixMn2O4のLi濃度についての検量線を決めることに成功した。 コンプトン散乱法の特徴は、入射X線に100keV以上の高エネルギーのX線を用いることであり、高エネルギーのX線は、高い物質透過能を有する。このような高エネルギーのX線を用いるLi濃度の分析手法は他にはなく、本分析手法を用いることにより充放電をさせながら、大型蓄電池内のLi濃度の定量が可能となる。現在、以上の成果をまとめた論文を投稿中である。 2に関しては、昨年度の成果を論文にまとめているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、コンプトンプロファイルを用いたリチウムイオン電池の電極材料におけるLi濃度非破壊定量法の確立と、コンプトン散乱法によるLiイオン濃度の変化に伴う電子構造の解明である。昨年度、LixMn2O4(x<1)の電子構造の変化に関する知見が得られ、本年度、コンプトンプロファイルにより、Li濃度の定量が行えることを示すことが出来たので、現在のところ研究の目的は、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、リチウムイオン電池の正極材料として広く使われている、LiCoO2、LiFePO4についてもコンプトン散乱実験を行い、Sパラメータ解析による定量法の確立と、Li濃度の変化に伴う、電子構造の変化を解明することが今後の研究推進方策である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
最終年度に、成果発表の機会を増やすため平成25年度分の研究費をわずかに残すようにした。 今年度は、本研究の最終年度であるため、これまで得られた成果を論文にまとめ、投稿する際の論文投稿料、および、成果を発表するための学会参加費などで使用する予定である。
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[Presentation] CRYSTAL09を用いたリチウムイオン二次電池正極材料LixMn2O4 (x=0, 1, 2)のコンプトンプロファイルの第一原理計算2014
Author(s)
鈴木 宏輔, 峯岸 克彦, 濱野 健多, 櫻井 浩, B. Barbiellini, A. Bansil, 折笠 有基, 内本 喜晴, 伊藤 真義, 櫻井 吉晴
Organizer
日本物理学会 第69回年次大会
Place of Presentation
東海大学 湘南キャンパス(神奈川県平塚市)
Year and Date
20140327-20140330
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[Presentation] Electronic Structure of LixMn2O4 (1<x<2) using Compton Profile Measurement2013
Author(s)
K. Suzuki, N. Go, H. Sakurai, B. Barbiellini, S. Kaprzyk, Y. Wang, A. Bansil, Y. Orikasa, K. Yamamoto, Y. Uchimoto, M. Itou, Y. Sakurai
Organizer
8th International Conference on Inelastic X-ray Scattering (IXS2013)
Place of Presentation
SLAC National Accelerator Laboratory (USA)
Year and Date
20130811-20130816