2012 Fiscal Year Research-status Report
イオン液体を溶媒とする新規高強度イオンゲルの開発と二酸化炭素分離膜への展開研究
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24750066
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤井 健太 東京大学, 物性研究所, 助教 (20432883)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | イオン液体 / イオンゲル / ゲル化反応 / ガス分離膜 |
Research Abstract |
本研究は、イオン液体中で理想的な均一網目構造を形成する高分子ゲルの開発を行い、このゲルをCO2の吸収・分離に特化した機能性材料として材料展開することを大きな目的としている。本年度は、極めて低い濃度で高強度なイオンゲルを与える四股高分子, Tetra-PEGを用いて、(1) CO2ガスの吸収実験、(2)ゲル化反応のメカニズム解明、および、(3)生成したイオンゲルの構造解析について研究を進めた。 (1)に関して、95%以上の溶媒イオン液体を含むTetra-PEGイオンゲルを用いてCO2吸収実験を行ったところ、5分以内で速やかにCO2を吸収しゲルが破損すること無く体積膨張すること、その膨張度はガス圧3.5MPaで16%でありバルクイオン液体系での体積変化と同程度であることが分かった。分離膜として用いることを目的としているため,このイオンゲルの薄膜化について検討を行っている。(2)について、溶液反応論(酸塩基反応、反応速度論)の観点からTetra-PEGのゲル化メカニズムを調べた。まず、イオン液体中における反応末端(NH2基)の酸塩基性を調べたところ、イオン液体中ではNH2基がより強い塩基として働くこと、その酸解離定数, pKaは16.6であることが分かった。水溶液中での値(pKa = 10.2付近)とは大きくことなり、この違いがゲル化の反応性や反応時間に強く影響することが分かった。水溶液系の場合、このゲル化反応は高分子の架橋反応であるにも関らず一般的な化学反応速度論に従うことが分かっている。イオン液体中でも水溶液系と同様に反応速度論に従うことが明らかとなり、溶液化学的にゲル化反応を制御できることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
申請時の計画通り研究を進めることができ、特に、ゲル化反応のメカニズム解明については、世界的にも報告されていない非水系イオン液体中でのpH測定に成功し、ゲル化反応に深く関与する高分子の酸塩基反応を定量的にしらべることができた。ガス分離膜としての応用研究は着手したばかりであり、現在、薄膜化するための反応条件を検討している。今後は混合ガス中からのCO2分離について、分離係数の決定など定量的な研究を行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の研究では、イオン液体中のTetra-PEGゲル化反応のメカニズムを明らかにすること、この知見に基づきゲル化時間を制御することができた。イオンゲルの機械的強度はゲル化時間に強く依存するため、今回の成果により、Tetra-PEGイオンゲルの力学特性、反応時間を溶液反応論の枠組みで制御可能であることが示唆された。今後は、ガス分離膜としての最適条件を探索し、実際の分離能を評価していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度予算により、本研究遂行に必要な実験装置や計算研究用コンピュータの購入を行った。 H25年度(直接経費:50万円)は主に、試薬、国内学会旅費に使用する。
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