2012 Fiscal Year Research-status Report
ミクロスケール電気泳動に基づく高性能ブロッティング分析デバイスの開発
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24750068
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
末吉 健志 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70552660)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | キャピラリー電気泳動 / ブロッティング分析 / ゲル電気泳動 / アフィニティ電気泳動 / アルギン酸ヒドロゲル |
Research Abstract |
研究課題「ミクロスケール電気泳動に基づく高性能ブロッティング分析デバイスの開発」について初期検討を行った。本課題は,生命科学分野において必須の分析技術であるブロッティング分析における問題点である,「長い分析時間,煩雑な実験操作,多量の試薬」を解決することで,その進展に貢献することを目的としている。その実現ため,市販のキャピラリー電気泳動分析装置や電気泳動分析用マイクロチップを用いた新規ブロッティング分析法を考案し,短時間,簡便,省試薬量な分析の実現を目指して実験を行った。 本年度は, (1) アルギン酸ヒドロゲルを用いた分子ふるい効果の確認,(2) アルギン酸ヒドロゲルを用いたアフィニティリガンドの簡便な固定化法の開発とアフィニティ電気泳動分析法の開発について,それぞれ検討を進めた。 (1) アルギン酸ヒドロゲルは,アルギン酸および添加するカルシウムの濃度によって構造が変化することが知られている。そこで,本研究ではキャピラリー内に充填したアルギン酸ナトリウム溶液に対して,電気泳動によって種々の濃度のカルシウムイオンを加えることで,異なる構造のヒドロゲルを作製することを試みた。その結果,混合比を最適化することで種々のDNAのサイズ分離が可能となること,アルギン酸自体の構造の違いがゲル構造およびサイズ分離能に影響を与えることがそれぞれ見出された。 (2) アルギン酸ナトリウム溶液にアビジンを添加したものをキャピラリー内に充填し,その後カルシウムイオンを電気泳動によって加えたところ,アビジンがゲル構造の中に閉じ込められ,キャピラリー内に固定化されることを見出した。さらにアビジン内包ヒドロゲル充填キャピラリーを用いてビオチンラベル化試料のアフィニティ電気泳動分析を行ったところ,ラベル化試料のみがヒドロゲルに捕捉され,それ以外の試料はゲル充填部を通過し,検出されることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,当初の研究目標に対して比較的順調に研究が進行した。 まず,アルギン酸ヒドロゲルを用いたサイズ分離については,濃度比,混合比,およびアルギン酸自体の構造が,形成されたヒドロゲルが有する網目構造に起因するサイズ分離能に影響を与えることを計画通りに確認することができた。今後,分離したい試料の分子量に合わせて混合比や濃度等を最適化することで,高い分離能を有し,分析時間は短く,かつゲルの再充填が可能なゲル電気泳動分析用キャピラリーを調製可能になることが期待される。 アルギン酸ヒドロゲルを用いたアフィニティ電気泳動に関する研究についても,当初の目的から大きく遅れることなく進行した。また,ゲルに内包されたリガンドとアフィニティを示さない試料については,リガンドを含まない場合と同等の電気泳動移動度を示したことから,アフィニティリガンド内包ヒドロゲルを用いた選択的分離が可能となることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成 25 年度には,前年の要素技術開発によって得られた知見を基に,分離用およびアフィニティ分子固定化用ヒドロゲルの両方を同時に形成させたキャピラリーの調製,それを用いた電気泳動分析に基づく新規ブロッティング法の開発,その基礎的性能評価および実試料分析への応用を目指す。また,それぞれの要素技術開発に関する研究においては,分離能や選択性の異なるヒドロゲルを一つの分離流路内に複数調製し,ゲル電気泳動分析における分離能の向上や種々の特異的相互作用に基づくマルチアフィニティ電気泳動分析の実現を目指す。 (A) 連続的に注入された組成の異なるアルギン酸ナトリウム溶液を一括してヒドロゲル化することで,不連続構造を有するヒドロゲル充填チャネル/キャピラリーが簡便に調製できることが期待される。これを用いて,複雑な生体由来実試料の高性能ミクロスケールゲル電気泳動分離の実現を目指す。 (B) 異なるアフィニティ分子を含むアルギン酸ナトリウム溶液をキャピラリー内に連続的に充填後,一括してヒドロゲル化することで,連続的な代謝反応スクリーニングや,種々の選択性に基づく特異的分離を可能とするような,新規 ACE 分析法の開発を試みる。 (A + B) 分子ふるい効果とアフィニティ分子固定化に関する研究から得られた知見を統合し,サイズ分離用とアフィニティ分離用のヒドロゲルゾーンが連続的に充填されたキャピラリーを調製し,ブロッティング分析への応用を目指す。研究が順調に進展したならば,さらにキャピラリーを並列的に接続した集積化ブロッティングデバイスの創成を目指す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画の最終年度なので,実試料分析への展開を見込んで,ブロッティング分析にも用いられる抗原抗体反応を利用した特異的検出を分析系に組み込む予定である。したがって,高価な抗原・抗体等の購入費用が研究費の大部分を占めるものと予想される。 また,併せて成果報告のために年2回の国内学会発表と年1回の国際学会発表を予定している。その旅費として約300,000円程度を想定している。また,本研究内容に関して1または2本の論文執筆を予定しており,その際の印刷費として50,000~100,000円程度が必要となる。 既存のブロッティング技術と比較し,本研究の優位性について検証するため,一般的な電気泳動およびブロッティング装置の購入を予定している。
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Research Products
(14 results)