2012 Fiscal Year Research-status Report
シクロデキストリン-フェロセン相互作用による均一溶液中での電流増加型遺伝子検出
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24750071
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 しのぶ 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80510677)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 核酸 / インターカレータ / 電気化学 |
Research Abstract |
現在、遺伝子検出は多岐に渡る分野で利用されている。電気化学は装置の小型化が容易であるとともに、高感度な検出が実現できる手法である。本研究では、β-シクロデキストリン(CyD)に包接されたフェロセンは、その包接が解除されると電位のシフトと電流増加を示すという特性を利用して均一溶液中で電流増加型DNA検出を志向した検出システムを構築する。DNA検出の指示薬として、フェロセンとβ-CyDを単一の分子内に有するDNAインターカレータ(FNC2)を合成し、これらとDNAとの相互作用解析および均一溶液中におけるDNAの電気化学的検出について検討した。 1. FNC-DNA複合体のモルフォロジー評価 リンカー構造の異なるFNC2とDNA結合色素との相互作用解析について、UV-VISスペクトル測定、CDスペクトル測定、ストップトフロー測定による物理化学的評価を行い、DNAとインターカレートモードで結合することを明らかとした。また、2-DNA複合体の形態については、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察した。長さが決まっているプラスミドDNA(pUC19)を用いた。2が過剰に存在するときDNAは凝集し、DNA過剰な条件では部分的な連結が観察された。この凝集体はダマンタン添加に伴って解消された。 2. FNC2を利用したDNAの電気化学的検出 FNC2単独では0.44 Vで酸化電位が観察されたが、DNA存在下では0.34Vにシフトした。これは、β-CyDからフェロセンが除放されていることを示している。しかし、DNA固定化電極では、ハイブリダイゼーションに伴い、0.44 Vのピーク電流の増加のみが観察された。この結果は、電極の2本鎖DNA上でFNC2が超分子錯体を形成していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
FNC2の合成に成功し、FNC2とDNAとの相互作用解析(物理化学的評価)を行った。 UV-VISスペクトル測定によるScatchard解析によって、FNC2がFNC1よりもおよそ3倍結合能の高い電気化学指示薬であることを明らかにした。さらに、Stopped flow分光光度計による速度論解析によって、DNAとの会合速度がFNC1よりも10倍速く、遺伝子検出に十分な会合速度定数を有することを明らかにした。 また、プラスミドDNAであるpUC19とFNC2との相互について原子間力顕微鏡(AFM)で観察したところ、FNC2がpUC19に対して過剰である時は凝集体を形成するが、シクロデキストリンと結合するアダマンタン添加によってこの凝集体が解消されることを示した。 電気化学測定では、DNA非存在下およびDNA存在下において、それぞれ0.44V, 0.34Vで酸化電流を観察したことから、FNC2が予想通り、単独ではフェロセンとシクロデキストリンの包接体を形成しており、DNAの添加似伴いこの包接体が解消されることが示された。またPCR産物の添加に伴う電気化学シグナル変化を観察したところ、PCR産物の添加似伴って電流増加が観察されたことから、均一溶液中で遺伝子検出可能なことが明らかになった。 これより、計画していた研究はおおむね行うことができ、さらに従来合成していたFNC1よりもさらに結合能の高いFNC2を合成することができたことから、順調に計画が進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
FNC過剰な状態でDNAの凝集体が観察されたため、リンカー長の異なる新たなFNCの設計、合成を行う。 また、FNC単独による遺伝子検出だけではなく、フェロセン化ナフタレンジイミド(FND)とシクロデキストリン、もしくはFNDとシクロデキストリンを両置換基末端に有する(CND)による分子間包接対の形成に伴う均一溶液中での遺伝子検出方について検討を進める。 前者は、FNDとシクロデキストリンによる包接体を遺伝子検出に利用する方法は、DNAを凝集化することがないため、有用であると思われる。後者はFNDのナフタレンジイミド環とCNDのナフタレンジイミド環がスタッキングによる包接錯体を形成すると予想され、これに伴う複合体の安定化が期待される。 これらの化合物とDNAとの相互作用解析と電気化学的遺伝子検出システムの開発を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1. FNC3の設計・合成 FNC1および2によってDNA自身が凝集する場合、その原因はリンカー長にあると考えられる。両置換基末端のフェロセンとシクロデキストリンの距離が近いために包接が起こると思われる。そこで、FNC1や2に比べ、さらにリンカー長の短いものを設計・合成し、以下に示す測定を行い、FNC1および2と性能比較を行う。(1) FNC3単独のモルフォロジー変化(AFM測定、UV-Visスペクトル、CDスペクトルによる物理化学特性の確認)、(2) FNC3の電気化学特性、(3) DNA-FNC3複合体の相互作用解析(UV-Visスペクトル、CDスペクトルによる物理化学特性の確認)、 (4) DNA-FNC3複合体のモルフォロジー評価、(5) FNC3によるDNA検出について検討を行う。 2. FNCとCNDによる電流増加型遺伝子検出の試み 申請者は、これまでにCNDを合成し、2本鎖DNAとの相互作用解析を行ってきた。そこ結果CNDは2本鎖DNAにインターカレーションするものの、それには1時間程度必要であることがわかっている。一方、FNDは、1秒未満で2本鎖DNAにインターカレーションする。そこで、これらの複合体によるDNA検出を試みる。これまでにFND誘導体は構造によって、β-CyDにより安定化されるFND-DNA複合体が存在することがわかっている。このような特長を有 するFNDに対して、(1) FND-CND複合体のモルフォロジー変化、 (2) FND-CND複合体の電気化学的特性、(3) FND-CND-DNAの相互作用解析、(4) FND-CND-DNAのDNAのモルフォロジー変化(AFM観察)、(5) FND-CNDによるDNA検出について検討を行う。
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Research Products
(9 results)