2013 Fiscal Year Research-status Report
立体障害に頼らない金属イオンの配位数制御―イオン液体特殊反応場を利用して―
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24750074
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鷹尾 康一朗 東京工業大学, 原子炉工学研究所, 助教 (00431990)
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Keywords | イオン液体 / 錯体構造 / 脱水和 |
Research Abstract |
イオン液体テトラフルオロホウ酸1-エチル-3-メチルイミダゾリウムを調製し、テトラフルオロホウ酸コバルト(II)6水和物を減圧下で加熱することにより溶解した。その結果、以前の報告時と同様に4個の水分子によって正四面体型に配位されたCo(II)イオンに起因する特徴的な濃青色の溶液が得られた。本研究の主目的の一つである極限的脱溶媒和状態を明らかにするため、脱水剤の添加による水分子の分解を試みた。オルトギ酸トリエチルを加えると、溶液の色はCo(II)イオン周囲の配位構造が八面体構造であることを示すピンク色となった。これまでのところ、この溶液を減圧下で加熱しても色の変化は認められず、Co(II)イオンの現時点で判明している極限的脱溶媒和状態は水分子4個に囲まれた四面体型錯体であると言える。 また東工大への異動に伴って核燃料使用施設でのウランの使用が可能となったため、HSAB則における硬い酸の代表ともいえるウラニルイオンについても検討を開始した。これまでの各種分光学的手法を用いた検討において、Co(II)の場合と同様の減圧加熱処理により水和水がすべて脱離されていることを示唆する結果が得られている。更に、イオン液体中での挙動との比較のために有機溶媒の一種であるN,N-ジメチルホルムアミド中でのウラニルイオンと各種ハロゲン化物イオン(Cl,Br,I)の錯形成挙動について分光学及び錯体構造の両面から研究した。その結果、ウラニルイオンとの錯形成のしやすさの序列は、ハロゲン化物イオンの塩基としての硬さの序列に従っており、改めてウラニルイオンの酸としての硬さが如実に示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年1月より東工大へ異動に伴って放射線及び核燃料物質使用管理区域内におけるウランの使用を開始するために様々な手続きを踏む必要があり、また同管理区域内の研究環境の整備にもある程度の時間を要した。しかしながら、当初の予定通りイオン液体中における極限的脱溶媒和状態にあるウラニルイオンに対して高周期ハロゲンやリン・硫黄を配位原子として有する様々な軟らかい塩基を加えた際の錯形成挙動についての予備検討を既に開始しており、最終年度である平成26年度実施予定の「立体障害非依存型配位数制御による新規錯体構造の構築」へ向けて遅滞なく研究を進められる見通しである。
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Strategy for Future Research Activity |
上述の通り、代表的な硬い酸の一つであるウラニルイオンに対して様々な軟らかい塩基を加えた際のイオン液体中での錯形成挙動について紫外可視吸収スペクトル、核磁気共鳴スペクトル等の分光学的手法を用いて定量的に検討する。具体的な配位子の候補としては、臭化物イオン・ヨウ化物イオンといった高周期ハロゲン化物イオンや、トリフェニルホスフィン・チオ尿素といったリンや硫黄のようなソフトドナー原子を介して金属イオンに配位するものを考えている。更に、観察される錯形成挙動がイオン液体に特有なものであるかどうかを議論するため、通常の有機溶媒中における同様の挙動と錯形成定数等の熱力学的観点から比較を行う。
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Research Products
(2 results)