2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24750077
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
松本 信洋 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測標準研究部門, 主任研究員 (30358048)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 化学計量 / プライマリメソッド / 一次標準直接法 / 希土類 / 磁気分析 / 認証標準物質 |
Research Abstract |
一次標準分析法は、物質量が認証値である様々な認証標準物質の開発に用いられている。一次標準分析法の一種である一次標準直接法は、物質量の標準物質を参照する事なく試料の濃度等を直接定量できる分析法である。しかしながら、現在、国際度量衡委員会物質量諮問委員会が承認している一次標準直接法は重量分析法・電量滴定法・凝固点降下法の3種類のみである。 将来の一次標準直接法の候補となる新規定量分析法の実現を目的として、本研究における定量分析法の原理をキュリー・ワイスの法則に基づいて導き、その原理の妥当性確認を超伝導量子干渉計(SQUID)、および、質量比混合法により調製した酸化ガドリニウム(Gd2O3)と酸化ケイ素(SiO2)の混合粉末を用いる事により実施した。「反磁性物質の中にランジュバン常磁性を示す成分が含まれている混合物の場合,その混合物の磁気モーメントの温度変化を高感度磁力計で測定することによって,ランジュバン常磁性を示す成分の濃度を求める事ができる」というのが,本分析法の原理である。ランジュバン常磁性を示す成分は、量子スピン(不対電子)をもつ希土類イオン、または、遷移金属イオン、有機フリーラジカルである。 妥当性確認の前に、市販のSQUIDの試料空間における磁場・温度および検出される磁気モーメント値のチェックを、国際単位系(SI)へのトレーサビリティが確保されたNMR磁場測定器、白金抵抗温度計、磁気モーメント標準物質を用いて実施し、磁場・温度・磁気モーメント値の補正値・不確かさを求めた。 その後の妥当性確認の結果において、分析濃度と調製濃度の差が約2%となり、比較的良好な結果が得られた。分析濃度の拡張不確かさは約2%であり、その主な不確かさ要因は磁気モーメント測定値の再現性による不確かさである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
物質量の標準物質を参照する事なく試料の濃度等を直接定量できる新規定量分析法の開発では、他の方法による実験値と約10%一致すれば、初期の研究成果としては十分良好な結果であるとみなされる傾向にある。それに対して、今年度は2%程度で一致する結果が得られ、今後研究が更に進展する見通しを得た。 成果発表は、論文(国際誌)1報・国内学会発表(口頭)1件の他、所内で開催された所属部門主催の成果発表会におけるポスター発表も行った。
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Strategy for Future Research Activity |
前述の分析濃度と調製濃度の比較結果の信頼性を向上させるために,それぞれの濃度の不確かさ要因を詳細に検討・評価する。SQUIDにおける測定条件・測定方法、サンプルの調製方法の変更などを試みることによって多方面からの検討を行い,本新規分析法が一次標準直接分析法として広く認められるためのエビデンスの収得を目指す。また,分析濃度の不確かさの主な要因となっている磁気モーメント測定値の再現性および温度測定の精確さを向上させるための対策を実施する。 更に,本分析法のアプリケーション開拓の第一歩として,試薬メーカーから購入できるESR用標準物質など,主成分が安定フリーラジカルをもつ高純度有機化合物および高純度遷移金属化合物などの純度測定等を試みる。本新規分析法で主成分を定量した時の純度とメーカーによる純度の比較を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額のうち、136,840円は今年度調達請求済みの「校正済シース測温抵抗体」および「直流抵抗器校正」の納品日が次年度であるために生じたているものである。また、残りの次年度使用額のうち、当初全額科研費で購入予定だった備品について、年度末になり運営費交付金の一部をその備品の購入費に充てる事が可能になった事により、生じたものである。 当該次年度使用額の一部及び翌年度分として請求した助成金は、SQUID・ESR装置など共同利用施設装置利用料の他、SQUID・ESR用消耗品、試料自動調製のための機器レンタル費、試薬・書籍購入費等に使用する予定である。また、SQUID試料空間の温度測定の結果に基づき、高精度デジタルマルチメーターの購入または見送りを検討する。本研究課題の成果普及を目的として、英文論文校閲費・別刷代、国際会議参加のための外国旅費、国内学会旅費、ポスター作成費等に使用する予定である。
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