2012 Fiscal Year Research-status Report
イミンと二酸化炭素ガスからのワンポットによるアミノ酸の触媒的不斉合成
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24750081
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
美多 剛 北海道大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (00548183)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 二酸化炭素 / アミノ酸 / 固定化 / アミノシラン / フッ化セシウム / イミン / 遷移金属錯体 / 不斉合成 |
Research Abstract |
平成24年度は、二酸化炭素ガスを用いる光学活性なα-アミノ酸の合成を目指して、その最初のステップであるイミンに対する触媒的不斉シリル化の検討を精力的に行った。まず、調製が容易なシリルボロン試薬 (PhMe2Si-Bpin) を用いてキラル銅触媒によるN-スルホニルイミンへの触媒的不斉反応を開発するべく、種々の銅塩、および光学活性配位子の検討を網羅的に行った。その結果、一価のCuOTf1/2C6H6錯体を用い、リン系の不斉配位子を用いた場合に最高35% eeの不斉収率で目的のシリル化体が得られることがわかった。リン系の配位子を用いてこれ以上不斉収率を向上させることが困難であったため、次にアミン系の不斉配位子の検討を行ったところ、キラルな1,2-ジアミンを用いた場合に最高83% eeで目的のα-アミノシラン化合物が得られた。このものからは、一回の再結晶操作で光学的に純粋な単結晶を得ることができたため、X線結晶構造解析により正確な立体構造を決定し、得られたフラックのパラメータよりα-アミノシランの絶対立体配置をRと決定した。このN-スルホニルアミノシランは、フッ化セシウム存在下、一気圧の二酸化炭素ガスをDMF中-30℃で作用させることで、キラリティー若干の低下が観測されたものの、S体のα-アミノ酸誘導体(絶対立体配置の表記が反転)へ立体保持で変換できることがわかった。これより、二酸化炭素を一炭素源としたα-アミノ酸の不斉合成法の開発を達成することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題の目的は、光学活性なα-アミノ酸をイミンと二酸化炭素ガスから合成することである。まずは研究計画書に従い、イミンに対する触媒的な不斉シリル化反応に取り組み、その効率的な不斉反応の開発に世界で初めて成功した。これまでに、エノンやアルデヒドに対する触媒的不斉シリル化の成功例は報告されていたものの、イミンに対する触媒的不斉付加反応は全く報告されていないことから、我々が新たに開発した本手法は学術的にも大変興味深い。また、得られたα-アミノシランは、二酸化炭素雰囲気下、フッ化セシウムを作用させることで、対応するα-アミノ酸に立体保持で誘導できることも新たに見い出した。このように、これまでとは全く異なる手法で、イミンから光学活性なα-アミノ酸を化学合成できる合成法を提示できたことは特筆に値する。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度はN-スルホニルイミンに対する触媒的な不斉シリル化の開発を行い、最高83% eeで目的とするα-アミノシランを得ることに成功した。今年度(最終年度)は更なる配位子の構造変換を行うことで、より高い不斉収率の発現を狙い検討を進める。また、イミンの基質展開として、芳香族イミンのみならずアルケニルイミンやアルキルイミンについても検討を行う予定である。その後の二酸化炭素を用いるカルボキシル化は立体保持で進行するものの、若干の不斉収率の低下が観測されるため、本立体特異的なカルボキシル化の反応機構をNMR等を駆使して解明し、そこで得られた知見を基に不斉収率を損なうことなくカルボキシル化を進行させる条件を模索する。その後、イミンの触媒的不斉シリル化とカルボキシル化を組み合わせることで、イミンからワンポットで光学活性なα-アミノ酸を取得する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし。
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