2012 Fiscal Year Research-status Report
アルミニウム反応剤と有機ケイ素化合物を利用した位置選択的多置換ベンゼン合成と応用
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24750082
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
木下 英典 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (20550007)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 多置換ベンゼン / 位置選択的合成 / アルミニウム反応剤 |
Research Abstract |
有機ケイ素基が置換した1,3-エンインと水素化ジイソブチルアルミニウム (DIBAL-H)との反応により対称な四置換ベンゼンが、単一の位置異性体として生成することを既に報告している。しかし、この反応では、同一の1,3-エンインが、転位をともなう二量化を経て四置換ベンゼンを与えるため、多様な多置換ベンゼンを合成するという目的には制限があった。 これに対して、平成24年度の研究では、本反応を段階的に進行させることが可能であり、2種類の異なった1,3-エンインの交差反応が進行することが明らかとなった。すなわち、活性種であるアルミニウム反応剤の反応性を低下させることを目的に、反応系二加える添加剤を種々検討したところ、DIBAL-H と等量のジエチルエーテルを加えることにより、1,3-エンインの自己二量化反応を完全に抑制できることが分かった。続いて同一反応容器に、異なる構造を有する1,3-エンインを追加することにより、反応が段階的に進行し、異なった1,3-エンイン間での交差反応が進行することが分かった。これにより、置換基が異なる非対称な四置換ベンゼンが、中程度の収率ではあるが、完全な位置選択性で合成できることが分かった。 また、途中で加える1,3-エンインの代わりに、トリメチルシリルアセチレンを加えたところ、低収率ではあるが、同様の反応が進行し対応する三置換ベンゼンが完全な位置選択性で得られることも分かった。 以上の結果は、アルミニウム反応剤という入手容易な反応剤や、簡便に調製できる出発物質を用いること、さらに今まで合成できなかった多置換ベンゼンを位置選択的に合成できるという点で、これまでに報告されている多置換ベンゼン合成法に比べ優れているといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定した平成24年度の計画通り、二種類の異なる1,3-エンイン間の交差反応が進行し、非対称な四置換ベンゼンが完全な位置選択制で合成可能となったことから、本研究は順調に進展していると言える。 しかし、四置換ベンゼンの収率は、30~60%と中程度に留まっているため、反応のさらなる効率化が必要であると考えている。また、本反応では、ジエチルエーテルの添加をもってしても、副生物として二段階目に加えた1,3-エンインの自己二量化体が生成してしまう。この自己二量化体は、反応の効率を低下させるのみならず、目的とする交差環化体と構造が非常に似ているため、生成物の単離精製を困難にしている。 以上の二点が,問題点として挙っており、これらを解決する必要がある。しかし現時点で、問題点が明確になっており、また、目的生成物も単離精製し,その構造が同定できているため、本計画は、おおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
アルミニウム反応剤を用いる多置換ベンゼンの位置選択的合成反応の効率化と、副生物である自己二量化体の抑制に焦点を当てて研究を進める。具体的には、反応機構から自己二量化体の生成する理由を解析し、その生成を抑える添加剤や、反応操作の詳細な検討を行う。これまでの研究から、本反応が効率良く進行しない大きな理由の1つとして、活性なアルミニウム反応剤である DIBAL-H が系中で再生しており、これが,同定できないような副生物を生じさせていると考えている。そこで、系中で発生した DIBAL-H を効率良く補足するような添加剤の探索を行い、反応の効率化を実現する計画である。 また、出発物質として様々な1,3-エンインを用いることにより反応の適用限界を調査するとともに、より多様な多置換ベンゼンの構築を行う。 さらに、本反応で得られる多置換ベンゼンは、シリル基の置換したスチルベン誘導体であるため、その光物性についても精査する。このシリル基置換スチルベンは、固体として得られることから、固体状態で効率良く蛍光する有機分子材料の開発に繋がるものと考えられる。すなわち、得られたスチルベン誘導体の極大吸収波長や蛍光量子収率など光物性値を測定するとともに、単結晶X線構造解析や計算化学的手法を用いて分子の構造や結晶構造を解析することにより、高効率発光する蛍光有機固体分子材料の創出を行う。これまで、シリル基が置換したスチルベン誘導体は、ほとんど研究されておらず、本研究により新規固体発光材料が見いだせると考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「該当なし」
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