2012 Fiscal Year Research-status Report
含ヒ素ピンサー配位子を有する窒素錯体の設計・合成と触媒的窒素固定への応用
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24750083
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田邉 資明 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 研究員 (20384737)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アンモニア / ヒ素 / 窒素固定 / 窒素錯体 / アルシン / モリブデン / タングステン |
Research Abstract |
すでに予備的に新規のヒ素-窒素-ヒ素(ANA)型ピンサー配位子2,6-C5H3N(CH2AstBu2)2 (tBuANA)の合成に成功していたが、その安定した大量合成経路の開拓には至っていなかった。そこでtBu2AsClとリチオ化した2,6-ルチジニウムを反応させるという合成経路の反応条件を最適化することにより、ANA型ピンサー配位子tBuANAの大量合成経路の確率に成功した。 またヒ素-窒素-ヒ素(ANA)型ピンサー配位子を有する窒素錯体の合成に関し、モリブデン三価のプリカーサー錯体[MoCl3(thf)3]と、ANA型ピンサー配位子tBuANAとを、窒素気流中ナトリウムアマルガムによる還元条件下で反応させることで、ANA型ピンサー配位子を有するモリブデン窒素錯体[{Mo(N2)2(tBuAsNAs)}2(μ-N2)]の単離・合成に成功した。本錯体は単核のビス(二窒素)錯体{Mo(N2)2(tBuAsNAs)}ユニットが、互いにシス、トランスになるように窒素で架橋された構造を有している。これとは別にピリジン、ホスフィンなどが配位した単核の窒素錯体trans-[(tBuANA)Mo(N2)2(L)] (L = py, PMe3, etc)などの系統的な合成にも成功し、タングステンのアナログ錯体trans-[(tBuANA)Mo(N2)2(PMe3)]も合成した。 さらに[{Mo(N2)2(tBuAsNAs)}2(μ-N2)]を、プロトン源としてルチジニウム塩、還元剤としてコバルトセンを用いて、室温・常圧とという穏和な反応条件下で窒素ガスをアンモニアへと変換する反応に対する触媒活性を検討したところ、錯体当たり2当量のアンモニアの生成に成功した。 現時点で申請者が研究の目的とする触媒反応の開発には及んでいないものの、申請者の研究実施計画通りに研究は進んでいる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
「②研究期間内に何をどこまで明らかにしようとするのか」として、「申請者は配位子合成と錯体合成に重点を置いて研究を進めていく予定であり、まず新規含ヒ素ピンサー配位子の合成法を確立する。続いてモリブデンの窒素錯体を合成し、触媒反応への応用へと展開していく予定である。更に、鉄を始めとする他の遷移金属窒素錯体を合成し、触媒反応を比較検討する。」と申請したが、この内最後の「鉄を始めとする他の遷移金属窒素錯体を合成し、触媒反応を比較検討する」以外はおおむね申請通りに研究が進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
ニトロゲナーゼを構成する金属でもある鉄やバナジウム、あるいはルテニウム、ロジウム、イリジウムなど、ピンサー型錯体として脱水素化反応を始めとする種々の触媒反応が知られている遷移金属に関しても、モリブデンと同様に、ANA型ピンサー配位子を有する窒素錯体を合成しする。 そしてこれらの錯体に関し室温・常圧とという穏和な反応条件下で窒素ガスをアンモニアへと変換する反応に対する触媒活性を検討する。 またANA型ピンサー配位子に種々の置換基を導入することも併せて検討し、置換基効果を調べれる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
種々の遷移金属のプリカーサー錯体を合成し、今回合成したANA型ピンサー配位子2,6-C5H3N(CH2AstBu2)2 (tBuANA)と窒素気流中、還元条件下で反応させることで、ANA型ピンサー配位子を有する遷移金属窒素錯体を合成する。 またこれとあわせ、tBuANA以外のANA型ピンサー配位子の合成を検討する。
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