2012 Fiscal Year Research-status Report
テンプレート合成を鍵とした新しい環状π共役系化合物の合成とその機能解明
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24750087
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
茅原 栄一 京都大学, 化学研究所, 助教 (10610553)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | π共役系化合物 / 白金 / スズ / 金属交換反応 / 還元的脱離 |
Research Abstract |
フラーレンやカーボンナノチューブに代表される含歪み環状π共役系化合物は、優れた電子移動能や発光特性を持つため、有機EL、有機トランジスタ、有機太陽電池などの有機エレクトロニクス分野において、材料として利用する可能性が広がっている。 しかし、歪んだπ共役系を構築する合成的な難しさから、新しい含歪み環状π共役系化合物の合成は極めて限られている。一方、含歪み環状π共役系化合物の一つであるシクロパラフェニレン (CPP) の化学合成が、我々を含めた3つの研究グループによって近年報告され多大な興味が寄せられている。我々の合成法の特徴は、環状の白金四核錯体をCPPの前駆体とする点である。 この経路は、配位結合を用いた超分子金属錯体の高次組織化プロセスの原理にヒントを得て、含歪みπ共役系化合物の合成へと展開した初めての例である。本研究では、この経路を発展させることで、新しい含歪み環状π共役系化合物の合成の合成について検討した。 本研究では、配位結合を用いた超分子金属錯体の合成における分子設計を参考に、白金多核錯体を前駆体とした、三次元的な空間を環状π共役系化合物の合成を検討した。その結果、1,3,5-tris(p-trimethylstannylphenyl)benzeneとPt(cod)Cl2との反応により正八面体構造を持つ白金六核錯体が高収率で得られることを明らかにした。さらに、その錯体の配位子交換後、二フッ化キセノンを添加したところ、望みの炭素-炭素結合形成反応が進行し、目的の三次元環状π共役系化合物を得ることに成功した。さらに、光、電子物性、および構造特性といった、その化合物の基礎物性も明らかにした。本研究での知見と、超分子金属錯体合成の成果を利用することで、様々な構造や機能を有する新しい環状共役化合物の合成が行えるものと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究では、白金多核錯体を利用した環状π共役系化合物の合成戦略を用いることで、デザイン性の高い含歪み環状π共役系化合物を創製することを目的としている。研究当初は、金属ポルフィリンと有機配位子との配位結合により誘起されるテンプレート効果を、上記の合成戦略に組み込むことで効率的に含歪み環状π共役系化合物を合成することを計画していた。しかし、テンプレート効果を得るための官能基を含む基質を利用する必要性があるなど、合成経路に制限があるテンプレート効果を利用しなくとも、反応条件等をうまく選択することで、デザイン性の高い含歪み環状π共役系化合物を合成できることが明らかになってきた。特に、研究計画で提案した三次元的な空間を有する環状π共役系化合物の合成と物性評価を初年度で達成できた点は予想以上の成果である。このことから、研究当初の計画以上の成果が得られてると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度で最適化した反応条件を基に、研究計画で提案しているポルフィリン部位を有する新しい環状π共役系化合物の合成へと展開していく予定である。特に、ポルフィリン誘導体は、特徴的な電子、エネルギー移動を引き起こすことが出来ることから物性面からも興味が持たれる。合成ターゲットしては、研究計画で示した金属ポルフィリンがパラフェニレンで架橋した環状ポルフィリンリングとする予定である。しかし、まずは、本年度の成果を念頭に、テンプレート効果を利用しないで、目的の環状ポルフィリンリングが合成できるか否かを明らかにする予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬類・溶媒類:1点平均 4千円 x10~11点(月)x12 ヶ月= 500千円、器具類: 反応ガラス容器 1点平均 5千円x20点(年)+シリンジ類5千円x10点(年)+サンプル瓶、シリンジフィルタ、実験用グローブ、その他の消耗品 250千円 (年)= 400千円、 液体クロマトグラフィー用プレカラム:化合物の分取精製に液体クロマトグラフィーを多用するため計上した 30千円x2点(年)= 60千円、研究活動に必要な経費:論文投稿、別刷り費用 50~100千円+π共役化合物、有機合成化学全般に関する図書購入費5千円= 計1,010~1,200千円 旅費(1年当たりの概算): 国内100~200千円、外国200千円 その他:論文投稿の際の英文校閲 50~100千円。
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Research Products
(8 results)