2012 Fiscal Year Research-status Report
不斉ケイ素中心を持つ有機ケイ素化合物の触媒的不斉合成
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24750089
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新谷 亮 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (50372561)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 不斉ケイ素中心 / 触媒的不斉合成 / 非対称化反応 / パラジウム / ロジウム |
Research Abstract |
光学活性化合物は有機化学をはじめとする多くの分野で重要な化合物群を占めており、多くの研究者によって様々な光学活性化合物の効率的な合成法の開発に関する研究が成されている。しかしながらその多くが不斉炭素中心の構築を目指したものであり、不斉ケイ素中心を持つ有機ケイ素化合物の触媒的不斉合成に関する研究は非常に立ち遅れている未開拓の分野である。このような背景のもと申請者は当該年度において、プロキラルな有機ケイ素化合物の非対称化反応を鍵とした新たな触媒的不斉合成反応の開発に取り組んだ。その結果、パラジウム触媒を用いた分子内でのC-H結合の活性化を伴うアリール化反応による不斉ケイ素中心をもつジベンゾシロールの効率的な不斉合成に初めて成功した。ジベンゾシロール類は材料化学においてもその利用が期待されていることから本反応は有用性が高いと考えられる。また、類似のケイ素架橋ビアリール化合物であるジベンゾオキサシリンの触媒的不斉合成にも取り組み、ロジウム触媒を用いたエナンチオ選択的なトランスメタル化という新しい形式の不斉反応を開発し、これらの不斉ケイ素中心の構築にも初めて成功した。さらに、パラジウム触媒によるシラシクロブタンの非対称化反応による不斉ケイ素中心をもつシラシクロヘキセン類の触媒的不斉合成についても成果をあげることができた。これらの研究により、従来の方法では合成困難であった光学活性な有機ケイ素化合物群へのアクセスが飛躍的に改善され、今後のこの分野の発展も含めて非常に意義深い成果であると言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究を遂行するのに十分な環境のもとで日々研究に取り組めたので、期待どおりのペースで研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題が対象とする研究分野はまだ発展途上にあり、今後も新しい反応開発を含めて様々な取り組みが必要である。とくに次年度においては、引き続き不斉ケイ素中心を持つ新しい有機ケイ素化合物の触媒的不斉合成法の開発を中心に研究をおこなう予定である。具体的には、有機材料としての利用への展開も念頭において、新しいジベンゾシロールやベンゾシロール類の不斉合成およびその物性評価を重点的に行う。反応形式としてはアルキンの三量化によるベンゼン環の構築を鍵とした非対称化反応の開発などを考えている。また、反応機構に関する研究、および、必ずしも不斉ケイ素中心をもたなくても有用性の高い光学活性な有機ケイ素化合物の触媒的不斉合成反応の開発についても研究をおこなう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題を遂行する上での研究設備自体には特に問題のない環境にあるため、研究費の主な使途としては研究に必要な有機合成試薬やガラス器具といった消耗品の購入に充てる予定である。また、成果発表のための学会参加の際の旅費等にも一部使用する予定にしている。
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