2012 Fiscal Year Research-status Report
ファインケミカルズを指向する一炭素増炭型ヘテロ環構築反応の開発
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24750093
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
菊地 哲 慶應義塾大学, 理工学部, 助教 (60407872)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | アルキンの活性化 |
Research Abstract |
今年度は、銀触媒を用いるアルキンの活性化を鍵工程とする炭素-炭素結合生成反応を伴う二酸化炭素固定化反応の開発に取り組んだ。その結果、適切な位置にアルキン部位を有する芳香族ケトンに対し、ジメチルホルムアミド中、触媒量の安息香酸銀と、塩基として7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)とを合わせ用いると、温和な条件下炭素-炭素結合生成反応を伴う二酸化炭素固定化反応が進行し、高収率で対応するγ-ラクトン誘導体を得ることに成功した。本触媒系を用いれば、電子供与基および電子求引基、いずれの基が置換した芳香族ケトンと二酸化炭素との反応も円滑に進行し、高収率で対応する生成物が得られる。また、脂肪族アルキンから誘導された基質への適用も可能であり良好な結果が得られた。反応メカニズムに関しては、反応を1)エノラート生成過程、2)二酸化炭素との反応、3)アルキンの活性化とそれに続くラクトン生成の三つの素過程に分けそれぞれの段階を検証したところ、一段階目と二段階目の反応は塩基だけでも進行していることがNMRにより明らかになり、銀触媒は三段階目の中間に生成するカルボキシラートアニオンの環化の過程にのみ影響していることがわかった。さらに、同触媒系は、アルキンを有する脂肪族ケトンの反応へも適用でき、50℃の加熱条件下対応するγ-ラクトン誘導体が得られた。脂肪族ケトンの場合、α位が二カ所存在するため、二種類の生成物を与える可能性が考えられたが、エノラートの位置を制御することなく選択的に対応するγ-ラクトン誘導体のみが得られることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、銀触媒によるアルキンの活性化を鍵工程とする、炭素-炭素結合形成を伴う二酸化炭素固定化反応の開発が目的であった。検討の結果、ジメチルホルムアミド中、触媒量の安息香酸銀と、塩基として7-メチル-1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エン(MTBD)とを併用すると、適切な位置にアルキン部位を有する種々のケトンと二酸化炭素との反応が温和な条件下円滑に進行し、高収率で対応するγ-ラクトン誘導体を得られることを見出した。得られた結果は、学術論文“Angew. Chem. Int. Ed. 2012, 51(28), 6989-6992.(Hot Paperに選出)”としてまとめ、18th International Symposium on Homogeneous Catalysis (ISHC-18) (フランス・トゥールーズ)や日本化学会第93春季年会(滋賀)に参加し成果発表を行った。以上より、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に得られた結果をもとに、炭素-炭素三重結合の活性化を鍵とするプロパルギルアルコールと二硫化炭素との反応を試みる。まず、モデル基質の選定および反応の傾向を調べるため、種々のプロパルギルアルコールと二硫化炭素との反応を行う。これまでの予備的な検討の結果、塩基としてDBUを用いると円滑に反応が進行し、二酸化炭素との反応が困難であった第1級や第2級のプロパルギルアルコールとの反応も進行することが分かっている。しかし、副生成物の量が多く目的生成物の収率は低かった。そこで、まず目的とする生成物を効率的に合成できる反応条件の探索、および収率の向上を目指す。アルキンの活性化剤としては、炭素-炭素三重結合を効率よく活性化すると期待される金属種(金や銀、銅やパラジウム、白金やイリジウムなど)を二硫化炭素による被毒の可能性も考慮し検討する。反応溶媒としては、ハロゲン系から高極性溶媒まで幅広くスクリーニングし、さらに、塩基として、無機塩やアミン等種々の組み合わせを検討する。得られた最適条件のもと、種々の基質の反応を行い、基質一般性を調べる。得られた研究成果は、随時、国内外の学会およびシンポジウムで発表し、学術雑誌へ投稿する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究で使用するガラス器具や試薬の購入、および国内学会(日本化学会第94春季年会)や国際学会(International Symposium on Organic Reactions、台湾)参加のための旅費として使用する。
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