2012 Fiscal Year Research-status Report
ビフェニル基含有らせん高分子を用いた不斉選択性の反転が可能なキラル固定相の創製
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24750100
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
井改 知幸 金沢大学, 物質化学系, 助教 (90402495)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 光学分割 / 機能性高分子 / ポリアセチレン / 不斉選択性 / 高次構造制御 |
Research Abstract |
本研究では、らせんキラリティーの反転現象を利用して、キラルカラムの不斉選択性を切り替え可能な新材料“スイッチングキラル固定相”の開発を行った。まず始めに、ビフェニルユニットを側鎖に有するポリアセチレン誘導体を貧溶媒に含浸し、“光学活性ゲスト化合物”を添加したところ、固体状態のポリマー主鎖に一方向巻きらせん構造が誘起できることを見出した。光学活性ゲスト化合物として、“溶液状態のポリマーにらせん構造を効率的に誘起できることが分かっている1-フェニルエタノール”を用いた。上述の方法により一方向巻きのらせん構造を誘起した固体状態のポリマーに、逆のキラリティーを有するゲスト化合物を加えたところ、らせん構造が反転することも分かった。これらの結果は、“ビフェニルユニットを側鎖に有するポリアセチレン誘導体”のらせん構造は固体状態でも自在に制御できることを意味している。 さらに、“らせん構造の誘起・記憶・反転現象”を示す上記ポリマーを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用固定相として応用し、光学分割分野に新概念を提供する“スイッチングキラル固定相”に成りうることを見出した。側鎖のアルキル鎖長を調整することで逆相・順相の両モードで使用可能なスイッチングキラル固定相を調製することができた。また、水素結合を介してラセミ化合物と積極的に相互作用可能なカルバメート基を側鎖に導入することで、水酸基を有する軸不斉化合物を特異的に光学分割できることを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ポリアセチレン誘導体の固体状態におけるらせん構造制御法を確立できた。また、本制御法はシリカゲル表面上においても応用可能であることが明らかとなり、キラルカラムの不斉選択性を切り替え可能な新材料“スイッチングキラル固定相”の開発に成功した。以上は、当初の計画の通りである。上記の結果に加えて、側鎖置換基を変えることで“スイッチングキラル固定相”の光学分割が大きく向上することも見出した。 以上の結果から、本研究課題は“当初の計画以上に進展している”と結論づけた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に開発したスイッチングキラル固定相は、ポリマーの耐溶剤性が低いため、広範な種類の溶媒を溶離液に使用することができない。 より実用的なキラルカラムを開発するためには、固定相に“耐溶剤性”を付与し、溶離液の選択幅を拡げる必要がある。そこで本研究の次ステージとして、ポリマーをシリカゲルに化学結合し、固定化することを試みる。ポリマーは、らせんキラリティーに基づいて不斉識別能を発現するため、固定化する際には、後のらせん構造の形成を阻害しないように、“ポリマーの末端”のみでシリカゲルに結合させることが重要となる。以前の研究から、架橋部位として“トリアルコキシシリル基”を用いることで、定量的に高分子を固定化できることが分かっている。 以上を踏まえ、“末端にトリアルコキシシリル基を有するポリマー”を合成する。ロジウム触媒を用いるアセチレン類の重合はリビング的に進行するため、重合終期にトリアルコキシシリル基を有するコモノマーを添加することで目的のポリマーを合成することができる。固定化反応は、トリアルコキシシリル基含有ポリマーをシリカゲルにコーティングし、酸性水溶液中で加熱することにより行う。固定化後は、あらゆる溶媒を溶離液に用いることが可能となるので、平成24年度までのカラムでは使用できない溶離液を用いて光学分割能の評価を行う。 さらに、スイッチングキラル固定相の新概念を一般化するために、ポリアセチレン以外の動的らせん高分子を用いて、上記と同様の研究項目について検討を行う。具体的な高分子材料として、側鎖に動的軸性キラルなビフェニル基を導入したポリイソシアニドやポリイソシアナートを用いる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以下に示すように、研究費を執行する予定である。 物品費: 1,150,000 円 (薬品類、ガラス器具類、理化学機器類) 旅費: 300,000 円(高分子学会、キラリティーに関する国内及び国外の学会) その他: 150,000 円(英文校閲費、分析機器測定料)
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Research Products
(5 results)