2012 Fiscal Year Research-status Report
環状オレフィンモノマーの革新的合成と高耐熱性アクリル樹脂ライブラリーの構築
Project/Area Number |
24750102
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
松岡 真一 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (10432288)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 環状オレフィン / N-ヘテロ環状カルベン / アクリル酸メチル / 環化四量化反応 / 耐熱性高分子 |
Research Abstract |
汎用ビニル系高分子は一般に耐熱性が低い。しかし、主鎖に環状構造を導入することで、主鎖の剛直性が増加し、分子運動性が低下する。これにより高分子のガラス転移点を向上させることができる。このような高耐熱性ビニル系高分子は、有機材料の可能性を大きく拡張できる。しかし、共重合させる環状オレフィンの種類は限定的であるため、高分子の一次構造と耐熱性との詳細な関係はこれまで検討されていない。そこで現状では、多様な環状オレフィンを合成する新規手法の開拓が強く望まれる。本研究では、求核性の高い有機塩基であるN-ヘテロ環状カルベン(NHC)を触媒に用いた環状オレフィンの新規合成法の開発と、それをモノマーとして用いた(共)重合反応による耐熱性アクリル樹脂を合成することを目的としている。これまで我々はNHC触媒によるメタクリル酸メチルの二量化反応を報告している。今回、アクリル酸メチルに対してNHC触媒を作用させたところ、環化四量化反応が進行し新規環状オレフィンである三置換型のシクロペンテノン化合物を与えることを見出した。生成物の構造は、各種NMR測定により決定した。この反応は、原料として安価なアクリル酸メチルのみを使用している点で価値が高い。反応条件を検討したところ、かさ高い置換基を有するイミダゾール型NHCを用い、60℃以上の高温条件が必要であることが分かった。反応機構の考察を行ったところ、NHCとニ分子のアクリル酸メチルから成る極性転換中間体が反応に関与していることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今回、概念的に新規な合成手法を提案できた。NHC触媒により極性転換を起こし引き続き環化反応を起こすという触媒サイクルは、alpha, beta-不飽和エステルと各種求電子試薬から各種環状オレフィンを合成できる可能性を示している。この知見が得られたことは、本研究を展開するうえで、大きな意義を持つ。また、研究成果に直接現れてこない触媒合成などを効率よく進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度に見出したアクリル酸メチルの環化四量化反応の基質適用範囲をメタクリル酸エステル誘導体へと適用し、新たな環状オレフィンの合成を行う。および、ジビニル化合物の分子内環化反応により新規環状オレフィンを合成する。さらに、alpha, beta-不飽和エステルとイソシアネートや二硫化炭素などの不飽和化合物からの環状オレフィンの合成を検討する。得られたモノマーの重合反応により耐熱性高分子の合成と評価を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
試薬・溶剤、ガラス器具、実験用補助器具類などの消耗品の購入に使用する。また、一部は、核磁気共鳴装置や質量分析装置の測定使用料に充てる。
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Research Products
(6 results)