2012 Fiscal Year Research-status Report
キラル有機分子触媒組込型高分子の開発と不斉触媒への応用
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24750103
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Research Institution | Toyohashi University of Technology |
Principal Investigator |
原口 直樹 豊橋技術科学大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (30378260)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 有機分子触媒 / キラル高分子 / イオン結合 / 高分子触媒 / 不斉反応 / イオン交換反応 / 中和反応 / Diels-Alder反応 |
Research Abstract |
本研究は、キラル有機分子触媒二量体とジスルホン酸誘導体の連続的な分子間反応により、キラル有機分子触媒部位をイオン結合を介して高分子主鎖中に適切に組み込んだ新規主鎖イオン結合型高分子である”キラル有機分子触媒組込型高分子”の開発を行い、その触媒性能を評価すると共に、低分子触媒を上回る高度な立体選択性を発現する高性能高分子キラル触媒の開発を目指した。 本年度はアミン塩を含むキラル有機分子触媒二量体とジスルホン酸誘導体の分子間反応による、キラル有機分子触媒組込型高分子の分子設計ならびに触媒性能評価を行った。代表的なデザイン型有機分子触媒であるキラルイミダゾリジノン触媒二量体はチロシンから誘導したキラルイミダゾリジノン触媒とジブロモキシレンやジブロモブテン等のジブロミドのWillamson反応により合成した。得られたキラルイミダゾリジノン触媒二量体とジスルホン酸誘導体の分子間反応は連続的な中和反応であり、それぞれの溶液を室温で混合するだけでアミンスルホネート生成反応が速やかに進行し、目的とするキラル有機分子触媒組込型高分子が得られることが明らかとなった。この高分子は高分子主鎖にイオン結合とキラル有機分子触媒部位を含む新しいキラル高分子である。 次にキラル有機分子触媒組込型高分子の触媒性能を調査するために、シクロペンタジエンとシンナムアルデヒドのDiels-Alder反応の触媒として用いた。キラル有機分子触媒二量体は対応するモデル触媒と同等の触媒性能を示すのに対し、適切なキラルイミダゾリジノン触媒二量体部位のスペーサーとジスルホン酸を組み込んだキラル有機分子触媒組込型高分子はより高いエナンチオ選択性を示すことが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度計画はキラル有機分子触媒組込型高分子の分子設計、イオン結合安定性評価と自己重縮合型キラル有機分子触媒組込型高分子の合成を計画しており、キラル有機分子触媒組込型高分子の分子設計、イオン結合安定性評価はおおむね遂行済みである。また平成25年度に実施予定のIPCを用いた触媒的不斉反応にも既に着手していることから、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は自己重縮合型キラル有機分子触媒組込型高分子とハイパーブランチ型キラル有機分子触媒組込型高分子の合成と合成したキラル有機分子触媒組込型高分子を用いた触媒的不斉反応を実施する。 自己重縮合型キラル有機分子触媒組込型高分子は一分子内にアミン塩およびスルホネートを有する有機分子触媒は連続的なアミンスルホネート生成反応により合成する。アミン塩およびスルホネートは共存できないため、片方の官能基の保護または前駆体を使用する必要があり、保護したスルホネートとアミン塩を有するキラル有機分子触媒の脱保護、スルホネートおよびアミンを有するキラル有機分子触媒のアミン塩への変換の2つの方法により、自己重縮合型キラル有機分子触媒組込型高分子の合成を検討する。 2官能性アミン塩と2官能性スルホネートの代わりに3官能以上のアミン塩またはスルホネートを用いると、多分岐高分子の合成が可能となる。そこでトリスルホン酸誘導体またはキラル有機分子触媒三量体等の用いたハイパーブランチ型キラル有機分子触媒組込型高分子の合成を試みる。 これまでに合成したキラル有機分子触媒組込型高分子の有機分子触媒部位に対応した不斉反応を行い、キラル有機分子触媒組込型高分子の触媒性能の評価を行う。不斉反応における転化率、生成物の収率、立体選択性、触媒の再使用性に関して、従来の高分子固定化型有機分子触媒との比較・検討を行い、キラル有機分子触媒組込型高分子の特徴を明らかにする。得られた知見を元にキラル有機分子触媒組込型高分子の分子設計を行い、触媒性能の更なる向上を目指す。さらに、キラル有機分子触媒組込型高分子の親水性-疎水性バランスを調節することで、水系での触媒的不斉反応に適用し、環境調和型の有機反応プロセスを確立させる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
消耗品として不斉反応用試薬、ガラス器具、光学活性体分離用キラルカラム等、旅費として研究成果発表のための国内外旅費、人件費・謝金として研究補助、投稿論文校閲、その他として学会参加登録費を計画している。
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Research Products
(23 results)