2012 Fiscal Year Research-status Report
ナノ構造を制御した双性イオン液体型リチウムイオン伝導性ポリマーの開発
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24750112
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
藤田 正博 上智大学, 理工学部, 准教授 (50433793)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 機能性高分子 / イオン伝導性高分子 / 双性イオン / リチウムイオン伝導体 / ポリベタイン |
Research Abstract |
本研究では、重合性官能基を有する双性イオンとオリゴエーテルモノマーとのランダム共重合化を行い、新規双性イオン液体型イオン伝導性ポリマーであるPZw-r-PMEOを合成した。PZw-r-PMEOに任意の濃度でリチウム塩(LiTFSA)を添加することで種々の複合体を作製し、諸特性評価を行った。イオン伝導度測定の結果、PZw-r-PMEO/LiTFSA複合体は80℃において、液体電解質に迫るイオン伝導度を示した。さらに、PZw-r-PMEO/LiTFSA複合体のリチウムイオン輸率は、高塩濃度領域でも0.2程度の比較的高い値を示した。従来のポリエーテル系の場合、リチウム塩濃度の増加に伴い、イオン伝導度とリチウムイオン輸率は単調に低下する。特にリチウムイオン輸率は0.1以下に低下することが知られている。双性イオン液体型イオン伝導性ポリマーは、従来の材料では困難であった高キャリアイオン濃度とキャリアイオンの高移動度の両立を達成するものと期待できる。赤外分光スペクトル測定の結果、PZw-r-PMEO/LiTFSA複合体中のTFSAアニオンのCF3伸縮振動に起因するピークが、LiTFSA単独のピークと比較して低波数シフトしたことがわかった。これはTFSAアニオンが、よりフリーな状態で存在していることを示唆している。双性イオン構造の導入によるリチウム塩の解離が促進されたことに基づくだろう。双性イオンは、一般的に10デバイ以上の大きな双極子モーメントを有するため、高塩濃度領域においても塩の解離を促進し、それがリチウムイオン輸率の低下を抑制したものと考えられる。これらの結果から、双性イオン構造の導入が高いイオン伝導度と高いリチウムイオン輸率の両立に効果的であることを実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、従来の材料では成し得なかった選択的イオン輸送と高イオン伝導性を両立する全く新しいイオン伝導性ポリマーを開発することを目的としている。双性イオン液体型イオン伝導性ポリマーの合成とリチウム塩複合体の作製および物性評価を行った。PZw-r-PMEO/LiTFSA複合体は、塩濃度の増加とともに、イオン伝導度とリチウムイオン輸率が増加する傾向を示し、従来のイオン伝導性ポリマーとは異なる挙動を示した。双性イオン構造の導入が高いイオン伝導度と高いリチウムイオン輸率の両立に効果的であることを実証した。本研究の目的はある程度達成されており、おおむね順調に進展している。今後は、明確なミクロ相分離構造を構築し、イオン伝導性との相関を精査することで、さらなる性能改善に結びつけることが主な検討項目である。
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Strategy for Future Research Activity |
ミクロ相分離構造を制御した双性イオン液体型リチウムイオン伝導性ポリマーの創出を目指し、重合性基と双性イオン液体の間にアルキルスペーサーを有する両親媒性ポリマー、および双性イオン液体モノマーと疎水性モノマーからなるブロック共重合体を合成することを計画している。親水ユニットと疎水ユニットの体積分率を調整することで、種々のナノ相分離構造を形成させる。双性イオン液体型モノマーと疎水性モノマーの極性は全く異なるため、重合反応条件の最適化に時間を要するかもしれない。そのような問題が生じた場合には、共重合体の合成だけにこだわらず、イオン伝導性ポリマーと低分子の双性イオン液体の複合体も作製する。マトリックスとなるイオン伝導性ポリマーと双性イオン液体の混合比を変化させることで、親水ユニットと疎水ユニットの体積分率を容易に調整することができる。それら複合体の評価も積極的に行うことで研究を推進し、目的を達成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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