2013 Fiscal Year Research-status Report
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24750119
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
加藤 恵一 東北大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80374742)
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Keywords | 導電性単分子磁石 |
Research Abstract |
本研究は、導電性単分子磁石の磁気電流物性を研究し、単分子磁石の磁気抵抗を観測することが目的である。昨年度合成した導電性単分子磁石、希土類-フタロシアニン(Pc)積層型導電性単分子磁石[TbPc2]Ixの電気挙動について詳細な研究をおこなった。まず、室温の単結晶光学反射スペクトルを測定した。結晶構造との比較から、分子積層方向(c軸方向)については0.8 eVで反射率の急激な立ち上がりが観測された。一方、分子積層方向に垂直方向(a軸方向)では反射率の立ち上がりは観測されないことから、反射スペクトルには異方性があることがわかった。この反射率をDrudeモデルで解析し、プラズマ振動数および光学的緩和速度から電気伝導率を求めたところ30 S/cmであった。この値は四端子法で得られた単結晶の電気伝導率と同じオーダーである。中心金属がYの[YPc2]Ixについても同じ結果を得ている。また、固体のUV-VIS-NIRスペクトルを測定した結果、近赤外領域になだらかな吸収が観測されたことからも、この化合物が良導体であることが示唆される。単結晶の電気伝導度の異方性を測定した結果、c軸はa軸方向に比べて2桁良く流れていることがわかった。さらに単結晶については磁化曲線の測定をおこなった結果、c軸方向に一軸異方性の強い系であることがわかった。今後は、[TbPc2]Ixの磁気抵抗について詳細に研究を行う予定である。また、ランタノイドイオン間に働く磁気双極子相互作用が磁化緩和時間に与える影響についても研究を行った。これらの結果の一部を論文として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
昨年度目的化合物の合成に成功し良質の単結晶を得ることに成功している。その結果、単結晶をもちいて、磁気測定・電気伝導測定・光学反射スペクトル測定が可能になり本年度は基本的な物性測定ができたと考えている。今後、導電性SMM化合物[TbPc2]I2の磁気抵抗を測定し、スピン依存伝度現象を詳細に調べる予定である。また、π電子拡張した単分子磁石TbNcPc(Nc=ナフタロシアニン、Pc=フタロシアニン)の磁気特性を詳細に行った。この分子を電気化学的酸化し一次元的に配列させた[TbNcPc]PF6を合成した。この分子は磁気ヒステリシスを示す温度が25 Kを超えることがわかった。この値は単分子磁石で現在報告されている最高温度14 Kを大きく超えている。TbNcPcを希釈して分子間相互作用を取り除いた孤立分子では2 K程度でしか磁気ヒステリスが観測されないことから、一次元的に配列した系と比べると劇的に挙動が変わる。結晶構造との比較からTbNcPcが一次元的に配列することが重要であることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定通り、導電性SMM化合物[TbPc2]I2の磁気抵抗を測定し、スピン依存伝度現象を詳細に調べる予定である。また、同じ結晶構造・酸化状態の一次元化合物[LnPc2]I2(Ln =Y, Dy)の合成も実施したので、これらの化合物とスピン依存伝度現象を比較することで局在スピンと伝導電子の相関について研究を進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行にしようする予定である。 平成26年度の研究内容に従い、物質合成のための試薬・ガラス器具・研究成果報告旅費等に使用する。
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Research Products
(20 results)