2012 Fiscal Year Research-status Report
捩じれたπ電子系分子ピンセットを用いたカーボンナノチューブの光学分割
Project/Area Number |
24750123
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
山田 道夫 東京学芸大学, 教育学部, 助教 (00583098)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 分子認識 |
Research Abstract |
本研究では、捩じれたπ電子系分子ピンセットを開発し、超分子化学的な分子認識に基づいた相互作用の違いを利用したカーボンナノチューブ(CNTs)の光学分割を目指している。そこで第一に、キラルな分子骨格にCNTsと相互作用するπ電子系ユニットを導入した分子ピンセットの設計と合成を行なった。キラルな分子骨格には、Troger塩基骨格やビナフチル骨格を採用し、その両端にピレン、フルオレン、ポルフィリンなどのπ電子系ユニットを導入した分子ピンセットを合成した。得られた分子ピンセットはラセミ体であるが、キラルカラムを用いたHPLC分取により、その光学分割に成功した。分割したエナンチオマーの光学特性については円二色性スペクトル測定により解析を行った。次に、分子ピンセットとCNTsとの相互作用を検証するモデル実験として、CNTsの部分構造と見なせる分子性炭素クラスターであるフラーレンC60との相互作用について分光学的に評価した。Troger塩基骨格にトルエン骨格を含む分子ピンセットを用いた場合、有意な相互作用は観測されなかったのに対し、フルオレン骨格を含有する分子ピンセットでは1:1の相互作用を示すことが吸収スペクトルおよび質量分析により見出された。さらに、フルオレン部位にオクチル基を導入すると、その会合定数の増加が見られた。以上から、フラーレン表面に働く相互作用としてπ-π相互作用だけでなくCH-π相互作用が関与することが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでにキラルな分子骨格とπ電子系ユニットからなる種々の分子ピンセットの合成、構造解析、光学分割に成功しており、CNTsのモデルであるフラーレンとの相互作用の検証や、CNTsとの相互作用の検証に着手しているところである。
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Strategy for Future Research Activity |
合成した分子ピンセットとCNTsとの相互作用について、吸収スペクトル、円二色性スペクトル、ラマンスペクトル等を用いて検討していく。得られた結果を分子ピンセットの分子設計にフィードバックし、適宜修正を加えていくことで選択性の向上を図る。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
効率的な分子ピンセットの合成のために有機合成装置を購入する。これまでに数社のデモ機を試験的に使用し、機器や備品等の選定作業を行っている。このほか、試薬、器具等の消耗品の購入、執筆中の論文の投稿費、学会発表のための経費を計上する予定である。
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