2013 Fiscal Year Research-status Report
捩じれたπ電子系分子ピンセットを用いたカーボンナノチューブの光学分割
Project/Area Number |
24750123
|
Research Institution | Tokyo Gakugei University |
Principal Investigator |
山田 道夫 東京学芸大学, 教育学部, 助教 (00583098)
|
Keywords | 分子認識 / カーボンナノチューブ |
Research Abstract |
本研究では、捩じれたπ電子系分子ピンセットを開発し、超分子化学的な分子認識に基づいた相互作用の違いを利用した単層カーボンナノチューブ(SWNTs)の光学分割を目指している。これまでに合成した分子ピンセットでは、主たる骨格にビナフチル基を採用し、両端にアセチレンスペーサーを介してポルフィリン部位もしくはピレン部位を導入した。SWNTsとの相互作用を検証したところ、末端がピレンであるよりもポルフィリンである方がCNTsとの親和性が大きく、SWNTsをTHF中に可溶化できることが見出された。得られたSWNT/分子ピンセット複合体について、各種分光測定を行った。可視域の蛍光測定からは、末端のクロモフォアからSWNTsへのエネルギー移動が生じていることが見出された。また、近赤外領域の蛍光マッピング測定では、SWNTsの孤立度に対応するSWNTs由来の発光が観測されたことから、SWNT/分子ピンセット複合体はTHF溶媒中で分散性が高いことが示された。また、光学活性な分子ピンセットを用いたSWNTsの可溶化実験において、末端の吸収に対応するエキシトンカップリング強度の変化が円二色性スペクトルにより確認された。このことは、SWNTs表面に分子ピンセットが相互作用した際に生じる分子のコンフォメーション変化を観測したことに相当すると考えている。このコンフォメーション変化について理論計算と実測値との比較を行ない、考察を行なったところ、アセチレンスペーサー周りの回転が支配的な要因であると結論づけられた。そこで次に、スペーサーをアセチレンではなく、オレフィンに変更し、この回転が起こらないようにした分子ピンセットを設計・合成した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SWNTs表面との相互作用に由来する有機分子のコンフォメーション変化を円二色性スペクトル測定により観測できることをはじめて見出しており、同現象をさらに追求し、解析を勧めることで、SWNTs表面での分子認識現象の解明につながるものと期待される。
|
Strategy for Future Research Activity |
異なるスペーサーを有する分子ピンセットとSWNTsとの相互作用について検証を勧めることで、SWNTs表面で起こる分子認識についての知見を得る。また、ポルフィリン骨格自体を化学修飾によりゆがませた誘導体の合成にも着手しており、合成が終わり次第、SWNTsとの相互作用を検証し、SWNTsの光学分割に挑戦する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究遂行上、機材の購入するのが望ましいと判断するに至り、次年度での購入を検討しているため。 研究上必要な機材の購入などに充てる予定である。
|