2012 Fiscal Year Research-status Report
多孔性“貴金属”錯体を用いた高活性・高選択性を有する不均一系触媒の創製
Project/Area Number |
24750138
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
松永 諭 神奈川大学, 理学部, 助教 (80451516)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 多孔性金属錯体 / 触媒 / 貴金属 / 細孔 |
Research Abstract |
我々は段階的な合成法を用いて、多孔性金属錯体(MOFs)の構成金属に貴金属を導入した多孔性“貴金属”錯体(NMOFs)の合成と、それを用いた高性能不斉触媒の創成を目的としている。 平成24年度は、配位子にトリメシン酸(BTC)を用いた新規NMOFsの合成をおこなった。BTCはHKUST-1と呼ばれるMOFの構成配位子で、HKUST-1は大きな比表面積や、安定で大きな細孔を有しているため、これを貴金属化したNMOFは不均一系触媒として高い性能を発揮する可能性がある。 段階的合成法の前駆体となるpaddle-wheel型Rh二核錯体[Rh2(H2BTC)4]を合成し、それをCu, Zn, Coを用いて集積化をおこなった。その結果、いずれの金属イオンにおいてもRh : M比が1 : 2のNMOF、[Rh2(BTC)4/3][M2(BTC)4/3]2 (M = Cu, Zn, Co)が得られた。粉末X線回折測定の結果、いずれのNMOFも構成金属がCuからなるHKUST-1, [Cu2(BTC)4/3]と同構造であった。BET比表面積はいずれも700 m2/g程度であり安定な細孔構造を有するNMOFsの合成に成功した。ジアゾ酢酸を用いたシクロプロパン化反応をおこなったところ、触媒活性は見られるが、細孔構造の崩壊も観測され、更なる条件検討が必要である。 一方、通常ZnやCoのみを構成金属に用いた場合、HKUST-1と同構造のMOFは得られない。しかし本方法では、前駆体に用いた[Rh2(H2BTC)4]の構造に引きずられるように、ZnやCoもpaddle-wheel型二核構造を形成し、結果HKUST-1と同構造になる事が分かった。これは、[Rh2(H2BTC)4]が構造指向試薬として機能していることを示唆しており、MOFsの新たな合理的設計法として期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々の提案した段階的合成法によるMOFsの貴金属化法は、種々の配位子へと適用できる事が明らかとなり、その構造は貴金属化していないMOFsと同構造であった。これにより、構造が既知のMOFsを合理的に貴金属化できることを証明することができ、合成法の最適化も達成した。不均一系触媒評価においては、活性は見られたが残念ながら構造の崩壊が起こってしまった。これらは基質の選択や条件、場合によってはモデル反応の変更をおこなう必要がある。一方で、[Rh2(H2BTC)4]が構造指向試薬として働き、通常はpaddle-wheel型構造を取りにくい金属でもpaddle-wheel型二核ユニットを連結節とするMOFsを形成することが明らかとなったことは、MOFsの合理的設計法として新たな発見であった。以上より、予定は概ね達成していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
NMOFsの合成について、引き続き種々の配位子へと展開をおこなう。特に大きな比表面積・細孔径を有するMOF-143の貴金属化を重点的におこなう。また、RhだけでなくRuにおいても同様のNMOFsが合成できることが明らかとなったので、これらも含めて合成をおこなう。これらと並行し、キラル配位子を用いた不斉NMOFsの合成を開始する。特に安価で入手可能なピロリドンカルボン酸などのアミノ酸を用いたNMOFsの合成をおこなう。 合成したNMOFsの触媒評価をおこなう。ジアゾ酢酸エチルを基質としたオレフィンのシクロプロパン化反応では、活性が見られたが細孔構造の崩壊が観測されたため、穏やかに反応するジアゾ化合物を選択する。また、NMOFsを用いた酸化触媒評価もおこなう。特にオレフィンのエポキシ化について重点的に評価をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度は、主にロジウム、ルテニウムの貴金属原料試薬とキラル配位子の購入による使用を計画している。その他合成に必要な試薬による支出のみで、測定機器等の購入は計画していない。
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Research Products
(12 results)