2013 Fiscal Year Research-status Report
多孔性“貴金属”錯体を用いた高活性・高選択性を有する不均一系触媒の創製
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24750138
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
松永 諭 神奈川大学, 理学部, 助教 (80451516)
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Keywords | metal-organic frameworks / noble metal |
Research Abstract |
平成25年度は、主に(1) 配位子に1,3,5-benzenetribenzoic acid (BTB)を用いた新規多孔性貴金属錯体(Noble-Metal-Organic Frameworks; NMOFs)の合成と(2) ピロリドンカルボン酸を用いた不斉細孔空間を有するNMOFの合成をおこなった。 (1) 配位子に1,3,5-benzenetribenzoic acid (BTB)を用いた新規NMOFsの合成 BTBはトリメシン酸(BTC)の拡張配位子であり、BTBをビルディングブロックに用いることで大表面積を有した安定なMOFが合成されている。これを貴金属化したNMOFは不均一系触媒として高い性能を発揮する可能性がある。BTBから数段階の合成ステップを経て [Rh2(BTB-TMS2)4]を合成した。これの全てのTMSエチルエステルを脱保護した前駆体[Rh2(BTB-H2)4]を合成し、DMF中でCu2+と集積化させる事で、目的とするNMOF、[Rh2(BTB)4/3][Cu2(BTB)4/3]2を得た。粉末X線回折測定の結果、構成金属がCuからなるMOF-143と同構造であることが明らかとなったが、現時点では細孔構造が不安定であり細孔内の溶媒を取り除く最適条件の検討を行っている。 (2) ピロリドンカルボン酸を用いた不斉細孔空間を有するNMOFの合成 ピロリドンカルボン酸を配位子としたRh二核錯体は、有用な触媒として知られている。これを用いることで、不斉空間を有するNMOFsの合成を目指した。 キラルなピロリドンカルボン酸をTMSエチルエステルで保護し、これを用いてRh錯体を合成した。これをTBAFで脱保護し、NMOFの前駆体のカルボン酸を有するRh二核錯体を得ることができた。今後はこれを用いてNMOFsの合成検討を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、我々の提案した段階的合成法によるMOFsの貴金属化法は、種々の配位子へと適用できる事が明らかとなり、構造が既知のMOFsを合理的に貴金属化できることを証明することができた。この結果を受け、平成25年度は大表面積・大細孔径を有する事で知られるBTBをビルディングブロックとしたMOF-177の貴金属化を行った。また、これまでは塩化チオニルを用いたTMSエチルエステル化と選択的な脱保護により、一つだけカルボン酸でその他はTMSエチルエステルにより保護された配位子を合成していたが、BTBのような大きな分子サイズを有するπ電子系カルボン酸配位子は溶解性が低く、従来法では合成が困難であった。そこで、水溶性カルボジイミドEDCを用いたDMF溶媒中での簡便な合成法を確立した。これにより大きな分子サイズを有するビルディングブロックを用いることが可能となり、更なる表面積の向上と細孔径の拡大が容易になり、分子設計の幅が大きく広がった。また、同様の手法で、ピロリドンカルボン酸を用いたRh二核錯体を合成でき、不斉空間を有するNMOFsの合成への足がかりを得た。触媒評価において細孔構造の部分的な崩壊が観測されるなど課題はあるが、予定は概ね達成していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
NMOFsの合成法はほぼ確立できたため、今後はこれまでに合成したNMOFsの物性と触媒活性評価を重点的におこなう。ジアゾ酢酸エチルを基質としたオレフィンのシクロプロパン化反応では、活性が見られたが細孔構造の崩壊が観測されたため、穏やかに反応するジアゾ化合物を選択する。また、キラル配位子(ピロリドンカルボン酸)を用いた不斉NMOFsの前駆体は合成できたため、これを用いてキラル空間を有するNMOFsの合成をおこない、不均一系不斉触媒反応の評価をおこなう予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ロジウム、ルテニウム等の貴金属試薬購入に予算を計上していたが、合成法の改善と収率向上により、予定を下回る支出となった。また、触媒評価等で用いた装置についても、現有の装置にて対応が可能であったことから、次年度使用額が生じた。 次年度は、主にロジウム、ルテニウムの貴金属原料試薬とキラル配位子の購入による使用を計画している。触媒評価は現有の装置で行うことができるため、機器の購入は予定していない。その他、これまでの研究で得られた成果を発信すべく国際学会への参加・発表を計画している。
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Research Products
(8 results)