2012 Fiscal Year Research-status Report
防腐剤に起因するハロゲン化芳香族類の水圏生態系蓄積と生体内運命の解明
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24750148
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Research Institution | University of Shizuoka |
Principal Investigator |
寺崎 正紀 静岡県立大学, 環境科学研究所, 助教 (10363904)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 代謝反応 / 代謝産物 / AhR活性 / 防腐剤 / 塩素化副生生物 |
Research Abstract |
今年度は、防腐剤の塩素誘導体の水圏生物への蓄積性に関連して、はじめにインビトロ試験系における塩素化パラベンの代謝反応および代謝物の分子構造について検討した。モデル物質として、防腐剤としての使用頻度や水圏での検出事例のほか、急性毒性および内分泌かく乱作用の可能性あるプロピルパラベンの2塩素置換体(Cl2PP)を選択した。ラット肝S9mix存在下における代謝反応を一次分解反応と仮定したとき、Cl2PPの代謝速度定数(k)は0.019/min、半減期は37minと算出された。一方、親化合物(塩素を有さない)であるプロピルパラベンの(k)と半減期は、それぞれ0.97/min、0.71minであったことから、塩素化に伴う防腐剤の難代謝性が明らかとなった。主要な代謝物として、3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシ安息香酸3-ヒドロキシプロピル(1)は、別途、ヒドロキシ安息香酸メチルから二段階の反応で得られた合成標品により、芳香環上に水酸基が置換した3,5-ジクロロ-2-ヒドロキシ安息香酸プロピル(2)は、GC-MSにより得られたマススペクトル解析により同定した。このほか、(1)の異性体と思われる化合物(3)を確認した。これらのうち生成物(1)および(2)は新物質であることが判明している。また、塩素化パラベンをヒトAhR受容体を導入した酵母アッセイ法により評価したところ、24物質中16物質が活性を示し、それらの活性能は陽性対照物質のβ-ナフトフラボン換算で0.00005~0.09であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
水圏生物中に蓄積する防腐剤関連物質の調査対象物質として、Cl2PPの水酸化体についても、検討する必要性が明らかになった。これは生物試料の分析の基礎的知見として有用である。一部の物質は合成法の目処も立ったため、毒性影響も把握できるようになった。同時に塩素化パラベンが生物体内に蓄積しやすいことも速度論解析から新たに判明した。また、蓄積性を考慮した場合、長期的影響による水圏生物への有害性が課題であった。本年度は、薬物代謝や免疫機能に関与するAhR活性を評価したところ、塩素化に伴う活性の増加を明らかにした。
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Strategy for Future Research Activity |
塩素化パラベンの主要排出源である下水施設放流域から捕獲した魚類と底生生物を分析する。これらの栄養段階(食物連鎖の順位)は、δ13C-δ15N同位体解析により決定する。また、放流域においてゲージ法による魚類および底生生物への暴露実験を実施する。これらの結果から、蓄積性の高い防腐剤関連物質を特定する。また、慢性毒性影響の更なる集積を図るため、水圏生物であるニセネコゼミジンコ(Ceriodaphnia dubia)を用いる多世代殖影響試験を実施する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(2 results)