2013 Fiscal Year Annual Research Report
イワムシ糞中における多環芳香族炭化水素(PAHs)分解挙動の解明
Project/Area Number |
24750150
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
小野里 磨優 東邦大学, 理学部, 博士研究員 (50610094)
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Keywords | 多環芳香族炭化水素 / 環形動物 / 物質循環 / 微生物分解 |
Research Abstract |
代表者は干潟環境中での多環芳香族炭化水素(PAHs)の動態を明らかにする過程において、環形動物であるイワムシ(Marphysa sanguinea)の糞にPAHsが高濃度に濃縮されること、及びその糞中に含まれるPAHsが短時間で分解されることを見出してきた。そこで、平成25年度は、糞中に存在するPAHs分解に関与する微生物の単離と同定及びPAHs分解産物の検出を試みた。 1. PAHs分解に関与する微生物の解明 唯一の炭素源としてピレンを添加した寒天培地を用いて、イワムシ糞中の微生物を選択培養した。その結果、ピレン含有培地上で生育が活発な菌を単離することに成功した。また、その微生物の同定を試みたところ、石油分解菌の一種である可能性が高いことが示唆された。 2. PAHs分解産物の検出 ピレン含有液体培地に単離したイワムシ糞中の微生物(コロニー)を添加・培養し、培地に含まれるピレン濃度の変化及びピレン分解産物の検出を試みた。TLCプレートを用いて成分を分離し、展開後のプレートに励起光(254 nm)を照射、デジタルカメラで撮影・記録するという方法を構築した。その方法を用いて検出をおこなったところ、培養液添加直後のサンプルからはピレン及び分解産物と推測されるスポット、1~20日後のサンプルのからは分解産物のみが検出された。培養液添加直後の時点でピレン濃度が大幅に低下し、分解産物が検出されたことから、培養液がピレン含有液体培地に添加されてから極めて短時間のうちにピレンの分解反応が起こり、分解産物が生じたと考えられた。この結果は、イワムシ糞中でのPAHs分解速度が極めて早いことを反映していると考えられた。さらに、ピレンの分解産物としてよく知られるヒドロキシピレンのRf値との比較から、この分解産物はヒドロキシピレンではなく、ヒドロキシピレンよりも極性の低い化合物であることが明らかになった。
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