2013 Fiscal Year Research-status Report
アモルファスメソポーラス炭素・酸化鉄複合材料の開発
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24750151
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Research Institution | Tsuyama National College of Technology |
Principal Investigator |
山口 大造 津山工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (60470118)
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Keywords | 磁性炭素材料 / 磁性固体酸触媒 / ナノ粒子 / 酸化鉄 / セルロース / 吸着剤 / 放射性物質 |
Research Abstract |
本研究は、炭素複合体の合成条件依存性およびこれによる酸触媒活性の変化について明らかにすることを目的とした。これまでに、金属塩水溶液濃度を変化させて炭素複合体を合成し物質のキャラクタリゼーション、磁化特性分析を行い詳細に調査検討した。また、これら炭素複合体の酸触媒化を一定条件下で行い、セルロースの加水分解反応をモデル反応とした酸触媒活性の評価、経時変化分析、反応条件の最適化を行った。 その結果、炭素複合体は、5nm程度のメソ孔を有する炭素中に10nm以下のγ-Fe2O3粒子が分散した材料であり、酸化鉄粒子径は、金属塩水溶液の濃度を濃くするに従って小さくなることが分かった。この複合体をスルホ化することにより材料表面に存在するγ-Fe2O3粒子はFe2(SO4)3へと変化し、1nm程度のグラフェンシートに結合したスルホ基、カルボキシル基、水酸基と共に酸点となっていることが分かった。NH3-TPD分析により、これらの酸強度は既存のカーボン固体酸より強く、酸点は最大で8倍となった。飽和磁化は、金属塩水溶液の濃度を濃くするに従って大きくなった。複合体と触媒の飽和磁化は検討前の基準に比べそれぞれ最大で3倍と1.5倍となり、目標値の1.2倍を達成した。また、セルロースのグルコースへの加水分解反応における活性は、最適反応条件において既存のカーボン固体酸の1.5倍となり実用化可能性が示せた。以上の結果から、炭素複合材料の合成条件を最適化出来た。 炭素複合体を放射性物質の吸着剤として応用できないか検討した結果、高い吸着性能を有することを発見した。福島県二本松市における実証試験の結果、土壌除染における減容化およびため池などの浮遊物を含む汚染水に対しても適用できることを実証し、実用化の可能性を示した。以上のことから、新たな機能の発見も含み、予定を大幅に上回るスピードで研究を進展させることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画(3年間)における検討課題は大きく分類すると次の3項目である。①金属塩水溶液濃度、金属塩種を変化させて炭素複合体を合成し物質のキャラクタリゼーション(SEM, TEM, N2吸着, XRD, Raman, XPS, Mossbauer, FT-IR, 13C-NMR, NH3-TPD, 元素分析)、磁化特性分析を行い詳細に調査検討する。②これら炭素複合体の酸触媒化を一定条件下で行い、セルロースの加水分解反応をモデル反応とした酸触媒活性の評価を行い、実用化可能性検討を行う。③磁化の増大を狙いニッケルの導入を試みる。 平成25年度までに得られた成果から、①および②の課題検討は完了し、新たに放射性物質の吸着剤として応用展開可能であることを示せた。今後は、③の課題および放射性物質の吸着剤としての応用展開技術開発研究を実施していく。以上のことから、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究計画における今後の検討課題は大きく分類すると下の二つである。 ①磁化の増大を狙いニッケルの導入(炭素複合体を合成する過程において、ニッケル水和物を混合させることにより、炭素中に酸化ニッケルもしくは酸化鉄/酸化ニッケルを導入すること)を試みる。 ②放射性物質の吸着剤として応用展開技術の開発研究を実施する。炭素複合体のセシウムおよびストロンチウムの吸着特性について、濃度依存性、経時変化およびpH依存性から検討する。また、NH3-TPDによる分析も含め、吸着現象の詳細について検討し解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
炭素中にニッケルを導入することを試みる物質のキャラクタリゼーションおよび放射性物質の吸着剤としての応用展開技術の開発研究(依頼分析費:TEM, XRD, XPS, NH3-TPD, 元素分析など)、消耗品(試薬等)の購入費、学会参加費、その旅費に使用する予定である。 ・試薬購入費・依頼分析費:560,000円 ・学会参加等旅費交通費:40,000円
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