2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24750158
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下川 浩輝 京都大学, 化学研究所, 助教 (70447928)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 蛍光化合物 / 分子内環化反応 / ミトコンドリア |
Research Abstract |
本研究の目的は、申請者らが発見したリード化合物を基盤にして、様々な塩基性に反応して蛍光を示す化合物を開発することである.リード化合物はpH8で分子内環化して蛍光物質に変化するが、この反応性を官能基の電子供与性によって制御した類縁体を合成する. 平成24年度はおよそ70種類の類縁体の合成とその物性の評価を主に行った.具体的には、まずはじめに、反応性を制御するための官能基として、電子求引性のニトロ基、アセチル基、エステル基を導入した類縁体を作成した.これらの類縁体はリード化合物とほぼ同様のPH8.0付近で分子内環化反応を起して蛍光を発する事がわかった.次に様々なハロゲンを導入した類縁体を合成した.これらの環化反応もおよそPH8.0付近で起こり、変化を見る事は出来なかった.さらに電子供与性基(メトキシ基、アミノ基、ジメトキシ基、トリメトキシ基)を導入した類縁体の合成を行った.これらの化合物はおおむねpH10.0付近で環化反応が起きる事がわかった. 一方で、ベンゾイル部位をベンジル基へと置換した類縁体や、蛍光波長へ影響があると思われるチエノピリジン部位の官能基を置換した類縁体の合成も行った.面白いことに、短波長蛍光の青から長波長蛍光の赤まで様々な蛍光波長を示す蛍光化合物を合成することができた.さらに、ベンジル基のp位やo位に電子求引基を導入した類縁体は酸性では青色蛍光を発し塩基性では赤色蛍光を発するといった興味深い物性を示す事がわかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度中の目標は類縁体の合成を完成させることであり、70種もの類縁体を合成出来たので順調と判断している.さらにこの過程で蛍光波長を変化させた化合物やpHによって蛍光波長が変化する化合物も発見できたことは次の研究へとつながる成果だと考えている.
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度からは、24年度までに開発した類縁体を用いて以下の二つの実験を計画している. ①開発した化合物を用いて、生きた状態の神経細胞やマスト細胞、好塩基球の細胞内塩基性顆粒の可視化を実現する. 開発した化合物で処理した細胞に対して、開口放出を誘起する様々な刺激を加え蛍光顕微鏡で観察し、開口放出を指標にしたスクリーニング系を確立する. ②血液中から好塩基球の細胞分画を試みる。全血に対して開発した化合物を加え、血液中に1%未満しか存在しない好塩基球の選択的な蛍光染色を行う. 次に、この血液からFACSを用いて好塩基球の分画を試みる.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の研究には、細胞培養用試薬、分子生物学用試薬やプラスチック器具など多くの消耗品が必要である。さらに、研究結果を多くの研究者に知ってもらい、生物学的研究に利用してもらうための論文投稿の費用や学会発表の旅費等も必要である. 研究費はこれらの費用に充てる考えである.
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