2012 Fiscal Year Research-status Report
ドメインスワッピングによるタンパク質多量化を利用した機能性分子配列
Project/Area Number |
24750163
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
長尾 聡 奈良先端科学技術大学院大学, 物質創成科学研究科, 助教 (30452535)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 国際情報交換 / インド / 中国 |
Research Abstract |
本研究では、光捕集アンテナのような優れた機能をもつ分子の機能発現メカニズムの解明を目標に、光応答性をもつ亜鉛置換シトクロムcの多量体をドメインスワッピング機構で形成し、その多量体の構造-機能相関の理解を目指している。平成24年度は、(1)亜鉛置換シトクロムc多量体の作製、(2)分光学的手法による亜鉛置換シトクロムc多量体の構造評価を行った。具体的な成果としては、 1. シトクロムcをフッ化水素ピリジン溶液と反応させ、シトクロムcのヘム鉄を除去し、亜鉛イオンを挿入した亜鉛置換シトクロムcを作製した。2. エタノール添加により亜鉛置換シトクロムcの多量体を作製し、ゲルろ過クロマトグラフィーで二量体から四量体を精製した。3. 亜鉛置換シトクロムc二量体、三量体、四量体の活性部位および二次構造が単量体と類似していることを吸収および円二色性スペクトル測定により明らかにした。4. NMR測定により、亜鉛置換シトクロムcの二量体が単量体と類似した立体構造をとっていることを明らかにした。5. X線小角散乱測定により、亜鉛置換シトクロムc多量体が溶液中で直鎖状構造をとっていることを明らかにした。 以上の成果より、光応答性を有する亜鉛置換シトクロムcを多量化することが可能であり、単量体の構造と類似した構造をとったまま多量体を形成したことから、多量化は単量体の機能を保持したまま進行すると推測される。これは本研究手法が機能性分子の配列に有用であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の研究実施計画に記載した、 (i) シトクロムcをフッ化水素ピリジン溶液と反応させ、シトクロムcのヘム鉄を除去し、亜鉛イオンを挿入した亜鉛置換シトクロムcを作製。(ii) エタノール添加により亜鉛置換シトクロムcの多量体を作製し、ゲルろ過クロマトグラフィーで様々な大きさの多量体を精製。(iii) 亜鉛置換シトクロムc多量体が直鎖状から環状構造に変化する溶液条件を検討。(iv) 亜鉛ポルフィリンの電子的環境を吸収スペクトル、タンパク質の立体構造を円二色性、NMR、X 線結晶構造解析により調べ、亜鉛置換シトクロムc多量体の構造を評価。(v) X線小角散乱測定により、様々な溶液条件下における亜鉛置換シトクロムc多量体の分子サイズと分子形状(環状または直鎖状構造)を評価。 以上の実験計画のうち、最も重要な目標であった亜鉛置換シトクロムc多量体の作製と二量体、三量体、四量体の精製が達成されており、これらの多量体の活性部位および立体構造についての分光学的解析も行われた。これらの成果を考慮して、本研究は計画に沿っておおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、亜鉛置換シトクロムc多量体の物理化学・構造化学的なパラメータと、蛍光寿命・エネルギー移動速度等の光化学的特性の相関関係について調べるため、研究実施計画に沿って(3)リンカーをヒンジ領域に挿入したシトクロムc変異体の作製と多量体形成、(4)亜鉛置換シトクロムc多量体の光化学的特性の評価を並行して行う予定である。具体的には、 (i) 様々な大きさの直鎖状および環状構造のシトクロムc多量体について蛍光スペクトルと蛍光寿命を測定し、多量体の大きさと分子形状が光化学的特性に与える影響を評価する。(ii) 亜鉛置換シトクロムc多量体の亜鉛ポルフィリン間の光エネルギー移動速度を計測する。(iii) 遺伝子工学的手法により、シトクロムc多量体のモノマーユニットを連結しているヒンジ領域にリンカーを挿入したシトクロムc変異体を作製する。(iv) 変異型シトクロムcの多量体を形成させ、(i)と同様に変異体多量体の構造と光化学的特性を評価する。 以上の実験を行う。また、本研究において得られた結果を取りまとめ、成果の発表を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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