2013 Fiscal Year Research-status Report
脳低温療法における神経幹細胞の膜上糖脂質組成変化解析及び機能解明
Project/Area Number |
24750164
|
Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
鈴木 佑典 日本大学, 理工学部, 助教 (20586755)
|
Keywords | 糖脂質 / 神経幹細胞 / 質量分析計 |
Research Abstract |
1.MALDI-TOF/MSによるガングリオシドの構造解析において,最適な固体マトリックスの選択および各種金属塩添加濃度を検討した結果,ガングリオシドGM3のリチウム付加分子関連イオンが検出可能であることを昨年度確認している.本年度はさらに複雑な糖鎖構造を有するGM2およびGD1aの解析においても有用な方法であることを確認した. 2.脳低温培養条件における神経幹細胞株(MEB5)のEGF枯渇によるアポトーシス抑制機構の解析を行った結果,通常条件(37℃, EGF(+))で培養したMEB5に発現している糖脂質は大部分がGD3であったが,アポトーシス誘導条件(37℃, EGF(-), 48時間培養後)ではGM3,GM1, およびGD1aなどのガングリオシド発現が上昇することを昨年度確認した.本年度は,EGF(-)条件下では,37℃と比べ,32℃において,EGF(+)条件と近似したガングリオシドおよびβ1-integrinの発現を確認したことから,膜マイクロドメインを構成するガングリオシド組成や,膜マイクロドメインに存在している因子の発現および局在が32℃,EGF(-)条件において維持されており,その結果,アポトーシスを抑制している可能性が示唆された.さらには,各条件で培養後の糖タンパク質をSDS-PAGE後のMS銀染色による染色結果から,32℃,EGF(-)条件でのみ発現が減少する糖タンパク質が複数確認された.さらに,それぞれをプロテオーム解析した結果,幾つかの糖タンパク質の候補を推定した. 3.薄層クロマトグラフィー(TLC)上で分離した糖脂質をシリカゲルごと掻き取り,クロロホルム/メタノール抽出後,1,2-ジクロロエタン洗浄を行った結果,簡便且つ迅速に固着剤由来バックグラウンドを除去可能であることが判った.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最適な固体マトリックスおよび各種金属塩濃度を組み合わせたMALDI-TOF/MSによる糖脂質構造解析法により, GM3のみならず, より複雑な糖鎖構造を有するガングリオシドの構造解析においても有用であることを確認した. また, 薄層クロマトグラフィー上で分離した糖脂質をシリカゲルごと搔き取り, クロロホルム/メタノール抽出後, 1,2-ジクロロエタン抽出を行うことにより, 簡便且つ迅速に夾雑物由来バックグラウンドを除去可能であることが判った. 以上のように, 糖脂質の構造解析法確立研究は着実に成果が上がりつつある. 脳低温療培養条件における神経幹細胞株(MEB5)のEGF枯渇に伴うアポトーシス抑制機構の解析結果から, EGF(-)条件下では,37℃と比べ,32℃において,EGF(+)条件と近似したガングリオシドおよびβ1-integrinの発現が確認されたことから,膜マイクロドメインを構成するガングリオシド組成や,膜マイクロドメインに存在している因子の発現および局在が32℃,EGF(-)条件において維持されており,その結果,アポトーシスを抑制している可能性が示唆されている.しかしながら,膜マイクロドメインに存在していることが知られているThy1やCD55をウェスタンブロットにより発現を確認することはできず,また,再現性の確認に時間がかかってしまっている.
|
Strategy for Future Research Activity |
32℃,EGF(-)条件でのみ発現が減少する糖タンパク質をMALDI-TOF-TOF/MSによるタンパク同定を行い、解析結果を確実なものとする。また、レクチンブロット解析およびMS解析により、糖鎖構造および糖鎖の結合位置に関しても解析を行う。また、それぞれの糖タンパク質の発現変化や膜マイクロドメイン上への局在変化解析を行う。最終的にsiRNAやshRNAを用いた糖タンパク質遺伝子発現抑制を行った後のアポトーシス制御に関しても解析を行っていく予定である。
|