2012 Fiscal Year Research-status Report
天然変性タンパク質の相互作用解析による新規分子認識モデルの創成
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24750166
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長門石 曉 東京大学, 医科学研究所, 助教 (30550248)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 天然変性蛋白質 / 物理化学解析 / 溶媒和 / 核酸 |
Research Abstract |
当該年度では、human Y-box binding protein (YB-1)の大腸菌発現系からの大量調製を行い、in vitro解析が可能な実験系の構築を行った。また構築した調製・解析系において、既知のターゲット核酸分子との相互作用解析を実施した。 YB-1は核酸結合蛋白質であるため、精製する過程において核酸除去の工程が必須となる。可溶性画分にて発現したYB-1をヌクレアーゼ処理することにより、大腸菌由来の核酸(ゲノムDNAやmRNAなど)を断片化し、YB-1からの解離をしやすくした。ヒスチジンタグを付加しているため、Niアフィニティークロマトグラフィーによるタグ精製を行い、核酸を洗い流し、高効率の除核酸(A260/280 = 0.7程度)を行うことに成功した。続いてイオン交換カラムクロマトグラフィーにて再度精製を行い、夾雑蛋白質の分離を行った。精製後、SDS-PAGEにて目的蛋白質の純度をチェックし、90%以上の高純度で精製できていることを確認した。以上の工程を踏むことにより、YB-1を効率よく大量精製することに成功した。核酸結合蛋白質の精製において、核酸除去と効率的な精製プロセスの重要性が明らかとなり、今後の核酸結合型天然変性蛋白質に対する精製戦略の基盤が構築できた。 調製したYB-1を用いて、既知のターゲット一本鎖DNAに対する結合解析を実施した。等温滴定型熱量測定を用いて、YB-1とDNA間の結合における熱力学的相互作用を評価したところ、YB-1はエンタルピー駆動型の相互作用であることが明らかとなった。一方、相補的な配列であるDNAに対する結合解析を行ったところ、両者では結合親和性の相違が観察された。したがってYB-1には塩基配列選択性が存在することが示され、その定量的解析に初めて成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
YB-1の大量発現、そして精製方法を確立できた。さらに核酸との物理化学的な相互作用解析を行うために、等温滴定型熱量計による解析を実施し、そのパラメータ化にも成功した。以上の成果は、YB-1の分子環境変化における多角的な相互作用解析を遂行する上で重要な基盤となる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度では、以下のポイントに注視して、YB-1の相互作用メカニズムの解明に挑む。 ・DNAとRNAに対する相互作用解析を実施し、その結合メカニズムの相違点を議論する。 ・YB-1の機能ドメイン分割した変異体を数種作製し、核酸に対する結合領域の同定とその分子メカニズムを評価する。 ・分子環境変化(塩濃度、カチオン種、浸透圧)における相互作用特性を評価し、YB-1の分子認識における溶媒和変化の重要性とその拡張性を精査する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度の研究費使用は以下のような計画を予定している。 消耗品費:オリゴDNAやRNAの多角的な熱力学的解析を行うため、そのサンプル調製のための大量のオリゴ核酸の合成を必要とする(40万円)。また蛋白質の発現調製やその他関連試薬(15万円)、詳細な相互作用解析を主に行っていくためにITCやDSC関連試薬(20万円)、その他バッファー類、分光測定に必要な分光セルなどの消耗品を購入する。 旅費等,その他:研究成果を積極的に発表するために、国内学会への参加する(20万円)。また学術論文への投稿費・英文校閲費(15万円)、文献収集・報告書作成等での印刷費を必要とする。
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