2012 Fiscal Year Research-status Report
常磁性金属修飾糖鎖を用いた過渡的相互作用の動的観察
Project/Area Number |
24750170
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
山口 拓実 分子科学研究所, 生命・錯体分子科学研究領域, 助教 (60522430)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 糖鎖 / NMR / 常磁性 / 立体構造解析 / ダイナミクス |
Research Abstract |
常磁性NMRによる糖鎖の立体構造解明: 本研究では、生体内で重要な役割を果たしている弱い相互作用の担い手として糖鎖に着目し、常磁性タグ修飾を施した糖鎖を応用することで、糖鎖の立体構造、ダイナミクス、相互作用様式を系統的に明らかにすることを試みている。平成24年度では、遺伝子改変酵母を用いて糖タンパク質上に均一に発現させた高マンノース型糖鎖M9に関して、その分離・精製条件、および化学修飾のための反応条件を最適化し、高効率に常磁性プローブを付与する手法を確立した。これにより、M9糖鎖の還元末端にニトロキシルラジカルやランタニドプローブを選択的に導入することに成功した。こうして得られたM9について1Hの緩和時間測定を実施し、各マンノース残基の空間配置に関する情報を反映した常磁性緩和促進効果を観測した。解析の結果、3本の分岐鎖のコンフォメーションは有意に異なっており、一部の枝を還元末端側に向けたフォールドバック構造を取り得ることが示された。一方、神経細胞膜上に豊富に存在する糖脂質ガングリオシドについても研究を展開し、各種ガングリオシドへランタニドイオンを用いた常磁性プローブを導入する手法を確立した。さらに、得られたガングリオシドをリン脂質ミセルやバイセルなどへと組み込み、多次元NMR計測によって擬コンタクトシフトや緩和促進などの常磁性効果を観測することで、脂質膜モデル中における糖脂質の構造情報を取得する手法を確立した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、分子間の弱い相互作用による過渡的な複合体形成機構の分子科学的基盤を明らかにするための、新規方法論の確立を目的としている。糖鎖の過渡的相互作用に関する精緻な情報を得るためには、水溶液中で揺らいでいる糖鎖の動的な観察が必要である。これまでの研究の進展により、細胞内の糖タンパク質の品質管理機構に関わる高マンノース型糖鎖や、細胞間コミュニケーションに関与する各種ガングリオシドを対象とし、常磁性NMR解析を通じてそれらのコンフォメーションのダイナミクスを定量的に捉える道筋を確立することができた。引き続き、糖鎖の安定同位体標識技術と組み合わせることによって、一連の糖鎖の3次元構造の揺らぎの評価を系統的に実施することが可能となると考えている。以上のように、研究はおおむね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
常磁性タグ修飾と安定同位体標識法を活用し、糖鎖のダイナミクスに迫る。前年度までに確立した手法に加え、より多くの情報を収集するために安定同位体標識を施した糖鎖を応用する。安定同位体標識されたグルコースを含む培地で酵母を培養することによって、標識化された高マンノース型糖鎖を調製する。また、酵素反応や有機化学手法を駆使して安定同位体標識化糖を合成する。こうして得られた試料へ常磁性プローブを導入し、超高磁場NMR装置を活用した各種常磁性効果の精密測定を実施する。これら一連の測定データと分子動力学計算とを組み合わせ、糖鎖のダイナミクスを定量的に解析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
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Research Products
(18 results)