2012 Fiscal Year Research-status Report
不代替透明導電膜を目指した電気化学的グラフェン合成法の確立と印刷法の導入
Project/Area Number |
24750175
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
沖本 治哉 山形大学, 理工学研究科, 助教 (20510168)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
Keywords | グラフェン / 電気化学 |
Research Abstract |
資源の少ない国内において、海外資源に左右されない不代替新材料の開発が急務とされる。特に透明導電膜は、資源枯渇が懸念されており、代替材料とされる無機物や有機物にも課題があり、新たな代替材料候補が必要とされる。本研究では、無機物、有機物の利点を併せ持つナノカーボン材料に注目し、不代替の高導電性フレキシブル透明導電膜の開発を目的とする。本目的を達成するため、電気化学的手法を利用した大量グラフェン合成手法の確立を目指した。従来の液相でのグラフェン剥離は、強力な酸化反応に頼っていたが、我々は、これを改善するため、平成24年度は、電気化学インターカレーションに注目し、様々なイオンを利用したグラファイトからの電気化学剥離によるグラフェンの作製研究と導電膜の作製に関する検討を行なった。グラファイトでは、様々なイオンを層間に挿入することが可能である。本研究では、挿入分子としてよく知られる硫酸系イオン等の一般的な塩電解質からイオン液体等を用いて検討を行なった。強酸系電解質(硫酸ナトリウムや硝酸ナトリウム)は、弱酸系電解質(リン酸ナトリウム)に比べ、剥離効率が良いことが分かった。これは、インターカレーションにおけるステージングが関わっていることが考えられる。また、グラフェンの層数を制御するために、印加電位のわずかな違いが有効であることも明らかとなった。グラフェンの剥離は、おおよそ+1.8V程度から進行し、+2V~+3V程度に上昇させることで、剥離したグラフェンの膜厚を4nm程度から1~2nm程度にシフトさせることに成功した。 以上のように、環境負荷の小さい試薬を使用し、電気化学的なグラフェン合成法を確立した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度の目標は、電気化学インターカレーションを利用した非破壊的グラフェン合成法である。現在までに、環境負荷の少ない塩電解質をインターカレートとして利用したグラファイトからの電気化学的なグラフェン剥離法を確立した。さらに、塩電解質外にも、有機物を利用した無水条件下での剥離法の確立にも現在、新規に挑戦している。また、合成だけでなく、X線結晶構造解析,Raman分光, 電子顕微鏡、X線光電子分光法などを利用して、剥離したグラフェンの構造解析を行ない、当初の目的である非破壊的なグラフェン合成が従来の液相合成に比べ格段によく達成されている。以上の事から、本研究の前半部であるグラフェンの剥離合成法の基礎は、おおよそ確立した。さらに、今後は、グラフェンの剥離合成法の最適化だけでなく、グラフェンの導電膜の作製に関するテーマを新たに開始し、25年度の研究に向けた準備を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在までのところ、グラフェンを温和な条件下で電気化学的に剥離し、透明導電膜の試作まで行なっている。今後は、透明導電膜の特性向上のため、より高品質・大面積・薄層のグラフェン作製を行なうため、これまでに明らかになったことを踏まえ、より精密な条件の最適化を行なう。一方、透明導電膜の特性は、材料以外に、膜のモルフォロジー・グラフェン間の接点の導電性の向上が必要であることから、これらのデバイス面においてグラフェン間における導電性の評価と、種々の液相における成膜法を試すことで、本研究で作製したグラフェンに対して最も導電性の向上が期待できる成膜手法の解明を目指す。また、実際に、剥離メカニズムが現在想定しているインターカレーションによって制御されているのかは、完全に解明されていないため、この点において、電気化学剥離の基礎学理を明らかにしていく。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度の使用額が申請額よりも少なかった理由として、材料費が、ほとんどかからなかった点が挙げられる。ポテンショスタットを用いた電気化学剥離装置についても、多くを代用品等で賄ったため、当初の申請額(100万円/装置価格)よりも少なくすることができた。また、インターカレートについても、塩電解質を中心として、極めて早期に、効果的な剥離を行なうイオンをおおよそ確定することができたため、当初よりも少なくなった。 これらの予算については、今後、グラフェン膜を作製するための塗布システムの構築する際の予算として使用し、25年度をより円滑に研究が進展できるようにする予定である。特に次年度に置いては、近年注目されつつある他の層状化合物の剥離による新奇グラフェン類似体の合成へも幅を広げるとともに、25年度は、導電膜としての特性向上のため、基板表面の改質によるグラフェン膜のモルフォロジーの制御と適切なドーピング方法の検討を行なっていく予定である。
|